高齢になると食が細くなって、あまり美味しく食べられなくなったということを見聞きします。
高齢になるとなぜ食べるための機能が衰えるのでしょうか。気を付けられることはないのでしょうか。高齢者が楽しく美味しく食べる工夫は何かないでしょうか。
本記事は、そういった悩みを持つ方を対象に書かれています。ぜひ参考にして高齢者の方と美味しい食事を楽しんでください。
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高齢者の食事で気を付けたい機能の衰え
高齢者が食事を楽しめなくなる理由に、味覚が鈍くなったり、噛む力や飲み込む力が低下したりすることがあげられます。
そうした機能の衰えが、高齢者の食事にどんな影響を及ぼすのかを以下で解説します。
味覚が鈍くなる
加齢によって味覚が鈍くなる傾向が生じます。なぜなら、食べ物や飲み物の味を感じる部位が衰えてしまうからです。
そうなると、今までは美味しく感じていた味付けも薄くまずく思うようになり、濃い味付けを好むように変化します。
また、味覚をあまり感じなくなると、食事への興味を失い食欲が低下します。
そして、食事の楽しみがなくなると、QOL(生活の質)は見るまに低下していくでしょう。
味覚を刺激するため、味や風味を生かした工夫が必要になるわけです。
噛む力が低下する
加齢で顎の筋力が弱くなることや、歯が少なくなったり、義歯になったりすると食べ物がうまく摂取できず、噛む力が低下していきます。
固めのものや繊維質が多いものが食べられなくなり、咀嚼(そしゃく)しなくても食べられるペースト状や細かく刻んだものなどは、高齢になるとやわらかい食べものが多くなる要因になります。
飲み込む力が低下する
食べ物を飲み込みにくくする主な原因は、加齢に伴う唾液の分泌量が減ることです。
食べ物が口の中でバラついてしまい、唾液でうまくまとめられなくなり飲み込む力が低下するのです。すると食べ物が食道にうまく通らず、気道に入ると「誤嚥」を起こし誤嚥性肺炎という危険な結果につながります。
唾液が少ないなら、サラサラした水やお茶ならいいだろうと思うのですが、そうした水分も実は誤嚥を引き起こしやすく気を付けたい飲み物といえるでしょう。
高齢者の機能低下で食欲不振に陥ることがあります。その対処法について以下の記事で解説していますので参考にしてください。
高齢者の食事で気を付けたいこと
食事は誰でも人生の楽しみの一つといえます。高齢者にとっては、なおさらそうでしょう。
高齢者の食事を安全で美味しく食べられるように、気を付けることを解説します。
必要な食事量をしっかり摂る
高齢者の食事量は若者と同じ訳ではないのは当然ですが、一日に必要なエネルギー量をしっかり食事から摂取するのは大事なことです。
高齢だからと油断して極端に少なくなると、栄養不足になり心身に悪影響を及ぼします。
一人ひとり身体活動の量は違うので、相応しいエネルギーを過不足なく摂取する必要があります。
一日に必要な摂取カロリーは、身体の活動能力によって違いますが、
70歳の男性で普通の活動レベルの人は2200キロカロリー、同じ条件で女性の場合は1750キロカロリーが必要だといわれています。
栄養バランスを意識して摂る
栄養バランスを考えて、タンパク質・ミネラル・ビタミン・食物繊維を摂取することは大切です。
しかし高齢者の食事では、タンパク質・カルシウム・ビタミンD・食物繊維が不足しやすいといわれています。
タンパク質の必要性
タンパク質は肉や魚に多く含有されていますが、噛みにくさや口の中でパサついて飲み込みにくいことで、高齢者にとっては食べにくい食材です。
また、加齢により消化吸収能力の低下も、タンパク質の不足の要因となっています。
しかし、タンパク質は筋肉を形成するのに必要な栄養素です。フレイルという筋力が弱った状態の予防には不可欠といえるでしょう。
ミネラル・ビタミン・食物繊維
これらの栄養素を多く含んでいるのは、固く噛みにくい野菜に多く含まれているため敬遠されやすく不足しがちになります。(食べやすい工夫は後述します)
なかでもビタミンDは、ミネラルのカルシウムの吸収を促す作用があり、骨粗鬆症になりにくい大切な栄養素です。骨粗鬆症は骨折して寝たきりの原因になることが多いため、ビタミンDとカルシウムの摂取に気を付けましょう。
高齢者の食事で栄養バランスに気を付けることは、健康寿命を長くし生き生きとした老後を送れます。
高齢者が筋肉をつけるためのに必要なタンパク質のことが詳しく説明されています。以下の記事を参照ください。
高齢者の食事で楽しく美味しく食べる6つの工夫
高齢者が味覚を刺激され美味しく食事を楽しむためには、味や風味を生かした工夫が必要です。
新鮮で質のよい食材を使い、適度な調味料や香辛料を用いることで、食欲がグッとそそられることでしょう。
以下に6つの美味しく食べる工夫を紹介します。
噛みやすくする工夫をする
食材を一口で入る大きさに揃え、隠し包丁をいれるなどの工夫をします。肉は噛み切りにくいため叩き、鶏肉は皮や脂身を除いたり切り目を入れたりしましょう。
ジャガイモなどの野菜は、よく加熱し歯茎でもつぶせるような柔らかさにし、根菜類は繊維を断ち切る切り方をすると噛みやすくなります。刺身や果物などそのままでも柔らかいものは喜ばれます。
以上のように切り方を工夫し、柔らかくするため煮込んだり蒸したりした調理法をとれるでしょう。
飲み込みやすくする工夫をする
飲み込みやすくするため、食材をまずよく煮込みます。舌と上あごでつぶせるように、煮崩れするくらい加熱すると良いでしょう。
また、裏ごしをして滑らかにしたり、ミキサーにかけたりする工夫もできます。
飲み込みやすさのため、つるっとした食感も大事で、片栗粉やゼラチンなどでとろみをつけ、適度な水分を含むものが望ましいです。
食べやすい食品・食材を選ぶ
食事を美味しく楽しんで食べてもらうため、食べやすい食品や食材を選ぶことが大切です。
高齢者の食事の食べやすさは「柔らかく、のど越しが適度で、口の中でまとまりやすいもの」で決まります。反対に食べにくいものは「固くて、粘りがあり、弾力のある粉っぽい」が特徴の食品です。
豆腐は柔らかくて食べやすいと思いますが、実は食べにくい食品なのです。
というのは、喉で形が崩れてしまい、まとまりにくいからです。
また、喉越しは良すぎても、むせやすいため要注意の食品といえるでしょう。
たとえば味噌汁や水、お茶などのサラサラとした飲み物などがあげられます。
さらに、麺類はすする必要がありむせやすく、そしてチャーハンは口の中でバラつきまとまらないですし、水分がないトーストなども飲み込みを悪くします。
生野菜は繊維が多いため、小さめに切ったり茹でたりして加熱し、食べやすい工夫が必要です。
正しい姿勢も楽しく食べる工夫になる
正しい姿勢で食事すると食事も食べやすく楽しいものになります。
椅子とテーブルでの食事の際は、背筋を伸ばし軽く顎を引き、少し前かがみになる姿勢が相応しいです。
背もたれがある椅子で、深く座って足を床につけます。テーブルの高さにも配慮し、腕をのせた時に肘が90度に曲がる程度がちょうど良いといえるでしょう。
たとえば、椅子とテーブルの距離が遠かったり、高さがあっていなかったりすると、不安定な姿勢となり食べ物をこぼしたり誤嚥につながったりしますので注意が必要です。
また、食べてすぐに横にならないようにすることも大切です。胃酸が逆流し食べた物を吐いてしまう原因となりますから、食後1~2時間くらいは横にならず座ったままの姿勢を保ちましょう。
正しい姿勢で美味しく食事を楽しんでください。
適切な口腔ケアをして食べる楽しさを持続させる
高齢者は唾液が減少することで、歯周炎・歯肉炎を起こしやすく口腔内が不衛生になります。食後の歯磨きをマメに行い、定期的に歯科医に行きメンテンナンスを行いましょう。
歯がなくなると食べたいものを美味しく食べられなくなりますし、入れ歯がうまく合っていないと痛みにつながり、食事する気もなくなってしまいます。
口腔ケアも高齢者が楽しく食事する工夫の一つといえるでしょう。
見た目や盛り付けも美味しそうに工夫する
食事の見た目は味覚に大きな影響を及ぼします。
いくら美味しく味付けされていても、見た目がグチャっとしていては、食べる気も失せますよね。
いろいろな食材で調理され、色どりも豊かに盛り付けられた料理は美味しそうで食欲をそそり、食後も満足感につながります。
香りが良く季節感のある旬の食材や行事食などを取り入れる工夫は、食欲を刺激し楽しく食事ができることでしょう。
噛みやすく、飲み込みやすく、美味しく、好みに合って見た目も良い食事は、高齢者によろこばれ準備した方も甲斐があるというものです。
高齢者が孤食になる場合があります。その際の対処策について以下の記事で参考にしてください。
高齢者の食事とともに安全サポートも大切
高齢者が楽しく食事をすることは生きる張り合いにもなります。
ですが高齢に伴って、もしも何かあった時のための安全サポートがあれば、安心感が得られ食事ももっと美味しく食べられるかもしれません。
高齢者にとって食事に気をつけるとともに、日常の安心サポートをしておくことも大切といえるでしょう。
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高齢者の食事のまとめ
高齢者の食事では機能が衰えることで、だんだん楽しめなくなることがあります。
高齢者が食事を美味しく楽しく味わうために気を付けたいことや、できる工夫を6つご紹介しました。
本記事で提案したことを参考にしてくださり、高齢になっても食べる楽しみが奪われないように、充実した老後を過ごしてください。