家賃債務保証会社が見守り等の新しいサービスを行う背景と実例を解説

従来なら連帯保証人の代わりとして借主の支援をしていた家賃債務保証会社は、新たに見守り等のサービスを始めています。

背景には、高齢化社会が進んでいる中で、高齢者の入居に対して警戒している貸主が多い現状があります。

今回は貸主が高齢者を避ける理由、新たに国交省が取り組んでいる内容、さらにすでに家賃債務保証会社が見守りサービスを付加することで高齢者の入居しやすい環境を構築していることについて解説していきましょう。

超高齢化社会では高齢者を入居対象者とすることが必須

2025年、75歳以上を迎える人が国民の5人に1人という超高齢化社会に突入します。

このような中、従来なら敬遠しがちだった高齢者を入居対象とすることが必須となってきています。

しかし次のような問題があるため簡単には進みません。家賃債務保証においても、従来のものに加えて高齢者の見守りについて検討する必要が生じています。

孤独な高齢者を受け入れることに消極的

賃貸住宅のオーナーは、高齢者に対しては基本的に受け入れることに対して消極的でした。最大の理由は孤独死です。孤独死が起きると様々な問題が生じてしまうために、オーナーはこれまで高齢者の入居を避けていました。

ではどのような理由があるのか？詳しくみていきましょう。

孤独な高齢者は孤独死等のリスクがある

賃貸のオーナーが高齢者を受け入れない最大の理由です。特にひとり暮らしの高齢者の場合は、孤独死が起きるリスクがあります。

孤独死に限らず自殺なども含め、貸した部屋で人が死亡した場合、事故物件という扱いとなります。

事故物件になればそこで死んだ場所ということもあり、次の借り手が中々現れずに大幅に家賃を下げるなどの対策に追われます。

原状回復に特別清掃・害虫駆除などの費用

孤独死がいつ発生したかにもよりますが、孤独死が起きて長期間気づかない場合、遺体が腐敗してそれが部屋に残るという事態になります。

それを原状回復する際に、特別清掃という方法を用いなければなりません。また長期間の遺体放置によっては様々な害虫が発生しており、これらの害虫駆除の費用も掛かります。

特に身寄りのない高齢者の場合はこれらの費用を自己負担する恐れがあります。

残置物の処分に手間が必要

孤独死には、遺体の処理のほかに前の入居者が貸主の了承を得ずに残した残置物があります。

残置物は死亡した本人の物ですが、事前の了承を得ていないので、勝手には処理ができず、死亡した本人と関係のある連帯保証人と連絡を取ったのちに処理をする必要があります。

また不要なものを処理するのにも余分な費用が掛かります。貸主の頭を悩ませる原因のひとつであり、高齢者を敬遠する理由です。

孤独な高齢者を見守るための家主の対策とは

孤独死を防ぐには、高齢者を入居させないというのが従来の方法でしたが、冒頭のように超高齢化社会を迎え、高齢者を受け入れないと空き室率が高まるといった問題が起こります。

そのため貸主は高齢者を受け入れて、リスクにつながらないために借主である高齢者を見守るという考え方があります。

入居者に連絡を入れて気配りをおこなう

借主である高齢者を見守る方法として、頻繁に入居者に連絡を入れる方法があります。

つまり入居者に変化がないかどうか、貸主が頻繁に連絡を取るなどして様子を見る方法です。

様子を見た際に反応がないなどの変化が起きた時に迅速に対応することで、孤独死を防ぐことにつながります。仮に孤独死になったとしても早期発見につながるため、特別清掃が必要な事態は避けられるでしょう。

家主向け保険の加入

貸主である家主が最悪の事態に備えるために保険に入る方法があります。家主向け保険の中には、孤独死によって発生する費用が保険で補えるものがあります。

保険に入っておけば、万一の事態に備えることができて安心です。空き室を増やさないよう高齢者を受け入れるために、今後、家主保険はますます重要性を帯びてくるでしょう。

見守りシステム付きの認定住宅とは

2024年、高齢者が賃貸住宅に入居しやすい方法を国交省がサポートする、という方針が明らかになりました。従来の住宅セーフティネット制度よりもさらに充実した「居住サポート住宅」制度を創設することで支援の動きを拡大させようとしています。

背景には高齢化社会で住宅が不足している

国交省が「居住サポート住宅」制度を創設する最大の理由は高齢化社会です。

これまでも要配慮者（障がい者、高齢者、子育て世代など）のために、民間の賃貸物件に入居できる支援を行っていたものの、現行法の制度では限界があるため、国交省が新たな支援制度を設立する必要に迫られていました。

「居住サポート住宅」として見守りシステム付住宅を認定

居住サポート住宅の大きな特徴は、見守り機能がついていることです。

高齢者が増えることでいちばんの問題となっている、孤独死に対応するための見守り機能をつけることにより、事前に入居者の異変に気づくことで孤独死を防止する狙いがあります。

見守りシステムの導入費用は基本的に貸主の負担になりますが、認定に関する細かい設定については今後決定します。

国が家賃保証会社を認定する

高齢者を含めた要配慮者が利用しやすくするための家賃債務保証会社についても、国が認定する制度が設けられることになりました。

従来は家賃債務保証会社と契約しようとすると、本人以外に個人の緊急連絡先の登録が必要でした。

それができない人は契約できずに入居できないという事態があるために、個人以外の社会福祉法人やNPO法人でも登録可能な、家賃債務保証会社を国が認定業者に指定し、これまで契約できない人でも契約しやすいようにします。

見守り・居住支援付きの新しい家賃保証プランの実例

国交省が新たに創設する見守りシステム付きの認定住宅の制度開始前に、すでに居住支援、見守り、非常時に対応した家賃債務保証の新しいサービスが誕生している事例があります。

ここでは貸主・借主双方が安心できる新しい家賃保証サービスについて詳しくみていきましょう。

家賃保証について

家賃保証については、年齢制限なしの審査が行われます。高齢者という理由で断られることがなくなります。保証人も不要ということで入居へのハードルが低くなりました。

さらに高齢者の孤独死発生後の空室保証を付けたサービスです。

居住支援について

居住支援については、最初に入居者に合わせた居住支援付き住居を提案します。入居後も定期的な訪問や連絡、相談対応を行うことで、高齢者の見守りを行います。

高齢者の状況によっては、ケアマネや福祉サービスなどの提案や紹介を行います。

非常時への対応

高齢者の緊急事態に対応した非常時対応も行っています。

具体的には法的手続きの対応や契約解除と言った法的なサポートを行います。

孤独死によって発生した特殊清掃や原状回復への対応や残置物撤去に関しても対応するので、安心して高齢者を入居させられるでしょう。

見守りサービスと緊急駆け付けについて

見守りサービスは、入居者が電気を利用したことの有無をモニタリングすることで異変がないか監視します。

また異常時にアラートメールを発信することで、緊急駆け付けが必要な際にも対応します。

その他の支援内容

その他にも様々な問題に対して支援・サポートを行っていきます。具体的には近隣トラブルの解決を支援したり、退去の立ち合いを代行したりします。また入院見舞金や引っ越し費用、コロナやリストラといった社会情勢の変化にも柔軟に対応します。

家賃債務保証・見守りのまとめ

家賃債務保証は、従来は家賃の保証を中心に行っていましたが、高齢化社会が進んでいく中で、高齢者が入居できるような家賃債務保証についても対応しなくてはなりません。

国交省が新たに見守りシステム付きの認定住宅を認定する制度を検討することになった一方で、すでに見守りサービスなどの付加機能を用意した、新しい家賃債務保証も誕生しており、高齢者が安心して入居できる体制が整いつつあります。