高齢者が歩けなくなる原因とは？複数の要因と対策方法を解説

「高齢者が歩けなくなる原因は？」

「高齢者が歩けなくなる前にできる対策はある？」

上記のように、高齢者が歩けなくなる原因について気になっている方も多いでしょう。

高齢者が歩けなくなる原因は、病気・身体機能の低下・環境や生活習慣の3つがあります。

本記事では、高齢者が歩けなくなる原因を詳しく解説していきます。

それぞれの原因を理解しておけば、予防や改善を期待できる場合もあるため、ぜひ最後までご覧ください。

また、高齢者が歩けなくなり、外出頻度が減ってしまうことによる問題点が気になる方は、以下の記事も参考にしてください。

高齢者が歩けなくなる原因①病気

高齢者が歩けなくなる原因として、病気が挙げられます。

高齢者が罹患する可能性がある病気として、以下の3つに分類して紹介していきます。

高齢者が歩けなくなる原因とそれぞれの病気がどのように関連しているのかについて詳しく解説していくので、参考にしてください。

筋骨格系の疾患

病気で高齢者が歩けなくなる原因の1つ目は、筋骨格系の疾患によるものです。

骨や筋肉、関節などに関わる病気が原因で歩けなくなる高齢者は少なくありません。

特に多いのは、変形性関節症であり、膝や股関節の軟骨がすり減って痛みがでる病気です。

階段の上り下りが辛いと感じたり、長時間歩けなくなったりするなどの症状が見られます。

また、骨粗鬆症も高齢者に多い筋骨格系の疾患です。骨がもろくなる病気であり、転倒時の骨折リスクが高まります。

太ももの付け根部分が骨折すると、手術後も歩けなくなる可能性があるため、注意が必要です。

関節リウマチという免疫系疾患により関節痛の症状が現れ、高齢者が歩けなくなる原因となる恐れがあります。

そのほか、腰部脊柱管狭窄症も高齢者に多い病気であり、歩けなくなる原因の1つです。

腰の神経の通り道が狭くなる病気であり、歩くと足が痛くなったり痺れたりして、長時間歩き続けられなくなります。

神経系の疾患

病気で高齢者が歩けなくなる原因の2つ目は、神経系の疾患です。

高齢者に多いのは、脳梗塞や脳出血などの病気であり、脳の血管が詰まったり破れたりすることで引き起こされます。

運動を司る脳の領域の血管に異常が起きると、手足に麻痺が生じたり、バランス感覚が悪くなったりして歩けなくなる原因になります。

また、脳内の神経伝達物質の不足によって起こる病気である「パーキンソン病」も歩行困難の原因の1つです。

手の震えだけではなく、小刻みな歩行になったり、歩き初めに足が前にでなくなる「すくみ足」になったりする可能性があります。

さらに、高齢者に多い認知症が原因で歩けなくなるケースも少なくありません。

認知機能の低下によって、道に迷いやすくなったり、歩行障害（歩幅が小さくなる・すり足になるなど）が生じたりする場合もあります。

循環器系の疾患

病気で高齢者が歩けなくなる原因の3つ目は、循環器系の疾患です。

心臓や血管の病気によって血液の流れが悪化すると、歩行能力に悪影響を与える場合があります。

例えば、心不全のような心臓のポンプ機能が低下する病気では、少し歩いただけで息切れをしたり、疲労感が強くなったりします。

症状が悪化すると、平地を少し歩くだけでも息苦しくなり、長距離を歩けなくなる高齢者も少なくありません。

末梢動脈疾患では、手足の血管が狭くなったり詰まったりします。

特に足の血流が悪くなると、歩行時に痛みやだるさが現れるため、高齢者が歩けなくなる原因になる可能性があります。

症状は一時的な場合も多く、休憩すると再び歩けるようになる点が特徴的です。

そのほか、不整脈で心臓のポンプ機能が弱まることで、動機や息切れなどが増加する場合もあります。

以上のような循環器系疾患は、適切な薬物治療や生活指導によって症状の改善が期待できるため、かかりつけ医に相談してみるのがおすすめです。

高齢者が歩けなくなる原因②身体機能の低下

高齢者が歩けなくなる原因として、身体機能の低下が挙げられます。

高齢者に多い身体機能低下の特徴として、以下の3つのパターンに分けて紹介していきます。

• サルコペニア
• フレイル
• バランス感覚の低下

それぞれの特徴と高齢者が歩けなくなる原因の関係を詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてください。

サルコペニア

身体機能の低下で高齢者が歩けなくなる原因の1つ目は、サルコペニアによるものです。

サルコペニアとは、加齢によって筋肉量が減少して、筋力が弱くなる状態を指します。

一般的には、30歳を超えると年間1～2％ずつ筋肉量が減少していき、70歳以降は減少速度がさらに加速します。

特に、お尻や太ももなどの大きな割合を占める筋肉が弱くなると、以下のような動作が困難になるケースが多いです。

• 立ち上がる
• 階段を上る
• 速く歩く

サルコペニアの原因は、加齢による筋肉を作る能力の低下・運動不足・タンパク質不足・慢性的な病気・ホルモンバランスの変化などが挙げられます。

具体的な症状としては、重いものが持てなくなる・歩く速度が遅くなる・疲れやすくなるなどが現れます。

このような症状により、高齢者がひきこもりがちになるケースも少なくありません。

以下の記事では、高齢者のひきこもりについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

フレイル

身体機能の低下で高齢者が歩けなくなる原因の2つ目は、フレイルによるものです。

フレイルという言葉は「虚弱」を意味しており、健康な状態と介護が必要な状態の中間段階を指しています。

フレイルの段階では、適切な対応をすれば健康な状態に戻れる可能性が高いとされています。

体のフレイルの判定基準は、以下の5つです。

• 体重減少
• 疲れやすさ
• 歩行速度の低下
• 握力の低下
• 身体活動量の減少

5つの項目のうち、3つ以上が当てはまっているとフレイルと判定されます。

そのほか、心のフレイル・社会のフレイルなどもあり、高齢者にとって大きな問題の1つとなっています。

フレイルは、栄養の偏り・運動不足・交流の減少・複数の病気・多くの薬の服用などが原因で引き起こされる可能性があるため、注意が必要です。

バランス感覚の低下

身体機能の低下で高齢者が歩けなくなる原因の3つ目は、バランス感覚の低下です。

バランスは、目からの情報・内耳の平衡感覚・足裏や関節からの感覚の3つが協力して保たれています。

しかし、加齢とともに3つの機能が低下していくため、高齢者は歩けなくなる可能性があります。

特に方向を変える時や平らではない道を歩くときにバランスが取れず、不安定さが目立つようになりやすいです。

高齢者のバランス感覚の改善には、片足立ちの練習・筋力トレーニング・太極拳やヨガなどのバランスが重要なスポーツがおすすめです。

また、バランス感覚が低下した状態でも、自転車に乗り続けたいと言う高齢者は少なくありません。

以下の記事では、高齢者の自転車について詳しく解説しているので参考にしてください。

高齢者が歩けなくなる原因③環境や生活習慣

高齢者が歩けなくなる原因として、環境や生活習慣によるものがあります。

歩行困難になる高齢者の生活習慣や環境について、以下の3つに分けて解説していきます。

• 運動不足
• 栄養不良や脱水
• 薬の副作用

それぞれの要素が高齢者が歩けなくなる原因とどのように関連しているのかについて、詳しく紹介していくので、ぜひ参考にしてください。

運動不足

環境や生活習慣で高齢者が歩けなくなる原因の1つ目は、運動不足によるものです。

体を動かす機会が少ないと、筋力や体力が急速に衰えていきます。特に高齢者の場合は1週間寝たきりになるだけで、筋力が10～15％減少すると言われています。

現代社会では、車・エレベーター・エスカレーターの普及などにより、高齢者の運動量が減少しがちです。

特に退職後は外出頻度が減少して、家の中での活動も限られることが多いです。

また、膝の痛みや息切れなどの症状があると動くのが億劫になり、より運動不足が進んでしまいます。

栄養不良や脱水

環境や生活習慣で高齢者が歩けなくなる原因の2つ目は、栄養不良や脱水によるものです。

高齢になると、食欲が落ちたり、食べ物を飲み込みにくくなったりする場合が多いです。

消化・吸収の働きが悪くなっていることも相まって、高齢者は必要な栄養素（タンパク質・ビタミンD・ビタミンB群）が不足しやすい傾向にあります。

高齢者に必要な栄養素	不足で起こる問題
タンパク質	筋力低下
ビタミンD	骨がもろくなる
ビタミンB群	手足の痺れ・記憶力低下

また、高齢者は喉の乾きを感じづらかったり、夜中のトイレが面倒で水分摂取を控えたりするケースも少なくありません。

脱水によって血液の流れが悪くなると、疲れやすくなったり筋力が低下したりする場合もあります。

反対に、高齢者が水分を取りすぎることについて気になっている方は、以下の記事も参考にしてください。

薬の副作用

環境や生活習慣で高齢者が歩けなくなる原因の3つ目は、薬の副作用によるものです。

高齢者は複数の疾患を抱えている場合も多く、たくさんの薬を服用することがあります。

加齢によって薬の分解・排出を行う肝臓や腎臓の働きが低下すると、薬の効果が強くなったり、副作用が起こりやすくなったりするケースも少なくありません。

例えば、高齢者の歩行に影響する薬として、睡眠薬や精神安定剤などがあります。

ふらつき・眠気・脱力などの作用によって、転倒リスクが2～3倍に増加すると言われています。

そのほか、血圧の低下や脱水、電解質バランスの乱れなどのリスクがある利尿薬や降圧薬にも注意が必要です。

「服用薬が問題かもしれない」と感じたら、医師や薬剤師に相談してみることをおすすめします。

高齢者が歩けなくなる前にできる対策

高齢者が歩けなくなる原因を数多く紹介しましたが、対策方法が気になる方も多いでしょう。

ここからは、高齢者が歩けなくなる前にできる対策を紹介していきます。

まず、運動習慣の継続が最も効果的です。

週に150分程度のウォーキングなどの有酸素運動と、太ももやお尻などの筋力トレーニングを組み合わせるのがおすすめです。

片足立ちやヨガなどのバランス感覚を養えるスポーツも検討してみましょう。

栄養管理では、筋力維持のためのタンパク質や骨を丈夫にするビタミンDの摂取を意識してください。

栄養バランスに気を付けていても、病気になってしまうリスクがあります。

病気が原因で歩けなくなることがないように、定期的な健康チェックを受けるのが重要です。

また、身体機能が低下した高齢者は、ちょっとした転倒が大きな事故に発展するリスクが高くなります。

家の中の段差を減らしたり、手すりを設置したりするなどの生活環境の整備も進めていきましょう。

高齢者が歩けなくなる原因を知って予防しよう

本記事では、高齢者が歩けなくなる原因について病気・身体機能の低下・環境や生活習慣の3つに分けて詳しく解説しました。

高齢者が歩けなくなる原因の中でも、身体機能の低下・環境や生活習慣が原因になっている場合は、改善または予防できる可能性が高いです。

高齢者が歩けなくなる前にできる対策を参考にしながら、健康的な生活を送れるように予防していきましょう。