高齢者の水分摂取量は？水分不足になる理由や無理なく摂るコツも解説

「高齢の家族の健康を守りたいけれど、水分の摂り方に不安がある」

「どうすれば無理なく水分を摂ってもらえるのか、具体的な方法を知りたい」

上記のように悩んでいませんか？

人は高齢になると体内の水分量が減り、のどの渇きを感じにくくなることから、水分不足に陥りやすくなります。

しかし脱水は健康に大きな影響を与えるため、日頃からこまめな水分補給が欠かせません。

この記事では、高齢者が無理なく水分を摂るための工夫や、果物やゼリーを活用した補給のヒント、注意すべきポイントなどをわかりやすく紹介しています。

高齢者の健康が守れるように、ぜひ参考にしてください。

高齢者に必要な水分量

高齢者が1日に必要とする水分量は、約2,200～2,800mlとされています。

たとえば体重70kgの人の場合、特別な運動をしなくても、呼吸や発汗によって約1,000mlの水分が自然と失われます。

さらに尿や便として体外に出る水分は、およそ1,800mlにのぼります。

こうした失われる水分を補い、体内の水分バランスを保つためには、1日あたり合計で2,500ml程度の水分を摂取することが大切です。

参考：4 高齢者の 1 日の水分量｜東京都保健医療局

高齢者が水分不足になりやすい理由

高齢者は若い世代と比べて、知らないうちに水分不足に陥るリスクが高まります。

その背景には、加齢によって起こる身体の変化がいくつか関係しているのです。

ここでは、水分不足になりやすい主な理由を3つに分けて詳しく見ていきましょう。

身体の水分量が減るから

高齢になると食生活の乱れにより、食事からの水分摂取量が少なくなっていく傾向があります。

そのため、知らず知らずのうちに水分不足に陥ってしまうことも少なくありません。

体調不良や運動不足、噛む力の低下などが、思うように食事が摂れない主な原因とされています。

脱水状態は脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な病気を引き起こす恐れがあるため、日頃から十分な水分補給を意識することが大切です。

のどの渇きを感じにくくなるから

高齢者はのどの渇きを感じにくくなることで、水分不足になる場合があります。

加齢に伴い感覚機能が衰えることで、のどの渇きを感じ取る「口渇中枢」の働きが鈍くなっていきます。

そのため、自分では水分不足に気づかないまま過ごしてしまう高齢者も少なくありません。

こうした場合には、家族や介護を担う方が、日常的にこまめな水分補給を促すことがとても大切です。

さらに、認知症の症状がある方は、口渇中枢の機能低下に加えて、水分を摂った記憶そのものを忘れてしまうこともあります。

このようなケースでも、周囲の人の丁寧なサポートが欠かせません。

以下の記事では高齢者の認知症について詳しく解説しているので、合わせて参考にしてください。

尿の量が減るから

尿の量が減ることで、高齢者は水分不足になることがあります。

特に糖尿病のある方は、一般的に尿の回数や量が増える傾向があるため、排尿後の水分補給を意識的に行うことが大切です。

また利尿作用のある薬を使用している場合も、体から水分が失われやすくなるため、脱水にならないよう注意が必要です。

一方で高齢者の中にはトイレに行くのが面倒だと感じたり、夜間に起きるのを避けたりするために、意図的に水分摂取を控える方もいます。

しかし、こうした行動は脱水を引き起こす原因になってしまいます。

とくに夜間の水分制限には、十分な注意が必要です。

高齢者が水分を無理なく摂るコツ

高齢者にとって水分をこまめに摂ることは大切ですが、年齢や体調によっては思うように飲めないこともあります。

無理なく自然に水分を取り入れるためには、日常の中で少し工夫を取り入れることがポイントです。

ここでは、高齢の方が負担なく水分補給を続けられるようにするための具体的なコツをご紹介します。

いつでも水分を摂れる環境を作る

高齢者はのどの渇きを感じにくくなるため、いつでも水分を摂れるような環境づくりが重要です。

たとえばすぐに手に取れる場所に、ペットボトルやストロー付きのコップや水筒などを置いておくと、こまめな水分補給がしやすくなります。

本人が自発的に水分を摂るのが難しい場合は、家族や介護者による声かけや促しが必要です。

入浴の前後、起床時や外出から戻ったときなど、水分補給が必要になる場面で意識的に声をかけることで、自然と水分を摂る習慣が身につきやすくなるでしょう。

高齢者が飲みたいものを選ぶ

水分補給には、水・麦茶・経口補水液などが適していますが、必ずしも種類にこだわる必要はありません。

何よりも、高齢者本人の好みに合わせて選ぶことが大切です。

その日の体調や気分によって、飲みたいと感じるものは変わるものです。

いくつかの選択肢を用意し、自分で選べるようにすると、抵抗なく水分を摂ることができるようになります。

「これなら飲めそう、口にしたい」と思える飲み物が見つかると、水分補給の習慣づくりにもつながります。

ただし糖尿病などの持病がある方は、糖分を多く含むジュースや甘い飲料を多く摂りすぎないよう注意が必要です。

健康状態に不安がある場合は、かかりつけの医師に相談しながら、適した飲み物や摂取量を確認することをおすすめします。

一度に飲もうとせずに飲む回数を増やす

一度に飲もうとせずに飲む回数を増やすのも、高齢者が水分を無理なく摂るうえで大切なことです。

水分を一度にたくさん摂っても、体が吸収できるのは約200mlほどといわれており、それ以上の水分は吸収されずに、ほとんどが尿として排出されてしまいます。

そのため大量に飲むよりも、少量ずつ回数を分けて飲むことが効果的です。

高齢者の中には、一度に多くの量を飲むのが難しかったり、コップ1杯を飲み切らなければいけないというプレッシャーを感じる方もいます。

ほんのひと口、口の中を潤す程度でも水分補給にはなります。無理のない範囲で、何度も少しずつ飲む習慣をつけることが大切です。

果物も積極的に摂る

食事の量が少なかったり、水分をあまり摂りたがらない高齢者には、果物をうまく取り入れるのが効果的です。

なかでも、イチゴ・スイカ・桃などは水分を多く含んでおり、水分補給の一環として適しています。

また、果物にはビタミン・ミネラル・食物繊維など、体にとって大切な栄養素も豊富に含まれています。

果物を積極的に取り入れることで、水分補給に加えて不足しやすい栄養を補えるというメリットもあるのです。

さらに継続的に果物を摂取することで、生活習慣病の予防やフレイル（虚弱・老衰・脆弱）対策にもつながると考えられています。

ゼリーなどの感触で水分補給する

飲み込みに不安がある方には、液体よりもゼリータイプの飲み物がおすすめです。

ゼリーはとろみがあるため、嚥下がしにくい方でも飲み込みやすく、のどへの負担が少ないのが特徴です。

また、間食としてゼリーやプリンを取り入れることで、食欲があまりないときでも、無理なくおいしく口にできることがあります。

ただし、水分補給の大部分をゼリーなどでまかなう場合には、糖分の摂りすぎに注意が必要です。

健康への影響を避けるためにもできるだけ糖分を含まない、または控えめのゼリーを選ぶようにしましょう。

以下の記事では、フレイル予防について詳しく解説しているので、合わせて参考にしてみてください。

高齢者の水分補給に関する注意点

高齢者の水分補給をサポートするうえで大切なのは、ただ水分を摂らせることだけではありません。

安心して水分を摂れるような環境づくりや、体調に合わせた配慮も欠かせないポイントです。

水分補給の際に気をつけたい点や、心身の状態に応じた対応のコツを、詳しく見ていきましょう。

利尿作用が高いものはできるだけ避ける

高齢者が水分補給を行う際には、利尿作用の強い飲み物はなるべく控えるようにしましょう。

利尿作用が特に高い飲み物は、以下のとおりです。

• コーヒー
• 紅茶
• 緑茶
• ウーロン茶
• フルーツジュース
• ココア

上記のような飲み物を摂っても体に水分がとどまらず、多くが尿として排出されてしまうため、水分補給の効果が薄れてしまいます。

特に就寝前にこういった飲み物を摂ると、夜中にトイレのために目が覚めてしまうことがあるため、注意が必要です。

定期的に声かけを行う

高齢者のなかには、自分ではのどの渇きを感じにくいことがあります。

そのため、できる限り家族や周囲の人が定期的に声をかけて、水分を摂るよう促すことが大切です。

特に認知機能に不安のある方の場合は、水分補給を本人に任せるだけでは不安が残ります。

こまめな声かけが難しい場合でも、「〇時になったらコップ半分の水を飲む」といったように時間と量を明確に伝えておくと、本人も意識しやすくなるでしょう。

高齢者の水分摂取は無理のない範囲で

高齢者にとって水分補給は、健康を守るうえで欠かせない習慣です。

加齢によりのどの渇きを感じにくくなったり、一度に多くの水分を摂れなかったりと、さまざまな理由で脱水のリスクが高まります。

そのため、本人の体調や好みに合わせた工夫や、家族・介護者による声かけが大切です。

水分補給を促すには、飲みやすい飲み物やゼリー、果物などをうまく取り入れながら、無理のない方法で習慣づけることがポイントです。