「高齢者のこだわりが強いのはなぜ？」
「こだわりが強い高齢者とうまく付き合う方法は？」
上記のように、高齢者のこだわりが強いことに困っている方も多いでしょう。
高齢者のこだわりが強いのは、脳機能の低下・環境の変化・元々の性格など、さまざまな理由が考えられます。
本記事では、高齢者のこだわりが強い理由について詳しく解説していきます。
また、こだわりが強い高齢者との接し方なども紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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高齢者のこだわりが強いのは、以下の4つの理由があるためです。
- 前頭葉の機能低下による感情抑制の難しさ
- 過去の成功体験やプライドを守りたい心理
- 環境の変化や不安感からくる防衛反応
- 元々の性格がより強く出る現象
それぞれの理由を詳しく解説していくので、高齢者のこだわりが強い理由が気になる方は確認しておきましょう。
なぜこだわりが強いのかを理解しておくことで、適切な対応方法を身に付けられます。
前頭葉の機能低下による感情抑制の難しさ
高齢者のこだわりが強い理由の1つ目は、大脳の最も前方に位置する前頭葉の機能低下による感情抑制の難しさによるものです。
加齢に伴って脳の機能が低下していくため、高齢者は感情をコントロールしづらくなります。
特に、思考や感情をコントロールしたり、理性的な判断を行ったりする「前頭葉」という部位は、加齢による影響が大きいと言われています。
前頭葉の機能低下によって、感情を制御できなくなるのです。
そのため、「自分の思い通りにならないと不機嫌になる」「意見が通るまでいうことを聞かない」などの状態になりがちです。
生理的な機能低下が原因になっているため、本人の意志ではない点を理解してあげましょう。
過去の成功体験やプライドを守りたい心理
高齢者のこだわりが強い理由の2つ目は、過去の成功体験やプライドを守りたい心理が働いているという点です。
多くの高齢者は、長年自分自身の力で仕事や家庭を支えてきたというプライドを持っているケースが多くあります。
しかし、仕事を辞めたり身体が衰えたりすると、「自分は誰の役にも立てない」と悲観的に捉えてしまう方も少なくありません。
具体的には「自分のやり方は間違っていない」「誰かの指示がなくても自分で判断できる」と主張して、自分の存在価値を守ろうとします。
高齢者のこだわりが強いのは、過去の成功体験やプライドを守るための行動であると理解してあげましょう。
環境の変化や不安感からくる防衛反応
高齢者のこだわりが強い理由の3つ目は、環境の変化や不安感からくる防衛反応によるものです。
加齢に伴って聴力や視力が低下して周囲の状況が把握しづらくなると、高齢者は常に不安を感じてしまいます。
新しいシステム（セルフレジやタッチパネル式の券売機など）に対応できなかったり、急な予定変更があったりすると、高齢者がパニックを引き起こすほどの大きなストレスになりがちです。
そのため、自分が確実に把握できている「いつもの場所」や「いつもの手順」に固執します。
環境の変化や不安感から身を守るための防衛本能として、こだわりの強さが現れている可能性があります。
高齢者のこだわりが強いのは、「安心したい」というサインでもある点を理解してあげましょう。
元々の性格がより強く出る現象
高齢者のこだわりが強い理由の4つ目は、元々の性格がより強く出ているケースが考えられます。
高齢者の中には、若いころは「会社のために我慢をする」「親として手本を見せる」といった理性や配慮で本来の性格を抑えていたという方も少なくありません。
しかし、社会的な制約がなくなったり、加齢にともなって脳の機能が低下したりすると、抑え込んでいた「こだわりの強い性格」が現れる場合があります。
周囲の人は「性格が変わってしまった」と感じがちですが、実際には高齢者が別の人格になったわけではありません。
加齢によって元々の性格が現れただけであるため、過度に性格の変化を責めないように気を付けましょう。
高齢者が人格を否定されたと感じてしまうと、より強い反発に発展する恐れがあります。
また、高齢者のこだわりを否定したわけではない場合でも反発が強いと悩んでいる方は、以下の記事も参考にしてください。
こだわりが強い高齢者との具体的な接し方
こだわりが強い高齢者との具体的な接し方として、以下の4つを紹介します。
- 否定せずに受け入れる姿勢を見せる
- 選択肢を用意して相手に「自分で決めた」と思わせる
- 第三者の言葉を借りて説得する
- 代替案を提示する
それぞれの方法を具体的に解説していくので、こだわりが強い高齢者の対応に困っている方は、ぜひ参考にしてください。
また、高齢者とのコミュニケーションについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみましょう。
否定せずに受け入れる姿勢を見せる
こだわりが強い高齢者との接し方1つ目は、否定せずに受け入れる姿勢を見せることです。
「それは間違っているよ」「そんなことはしないで」など、高齢者を頭ごなしに否定すると、高齢者からの反発が強まりやすくなります。
高齢者の防衛反応が働き、聞く耳を持ってもらえなくなる可能性もあるため、高齢者の感情を受け入れてあげるのが大切です。
高齢者のこだわりを否定せずに肯定的な反応を示せば、「自分のことを分かってくれている」と安心してもらえます。
安心感を与え続ければ、こちら側の提案も受け入れてくれるようになる可能性が高まります。
意見を伝える場合も、まずは高齢者の話を一度受け入れてから伝えるのを意識するだけで、無駄な衝突を避けやすくなるでしょう。
選択肢を用意して相手に「自分で決めた」と思わせる
こだわりが強い高齢者との接し方の2つ目は、選択肢を用意して相手に「自分で決めた」と思わせる方法です。
高齢者に限らず誰しも人から命令されることに抵抗がありますが、こだわりの強い高齢者はより反発しやすいです。
「この服を着てください」「あの場所まで行ってください」のように指示をすると、管理されているような不快感を感じる高齢者も少なくありません。
指示をしないためには「赤の服と青の服どちらが良いですか？」「お風呂に行く？それともお茶を飲む？」など選択肢を設ける方法が効果的です。
いくつかの選択肢を与えて、高齢者が「自分で決めた」と感じれば、こだわりの強い方でも自尊心を満たせます。
第三者の言葉を借りて説得する
こだわりが強い高齢者との接し方の3つ目は、第三者の言葉を借りて説得する方法です。
特に家族に対しては、甘えや遠慮のなさから言うことを聞かないという高齢者も多くいます。
反対に「娘に言われると腹が立つが、先生の言うことなら素直に聞く」といった高齢者も多いです。
無理に家族だけで解決をするのではなく、以下のような第三者の言葉を利用するのがおすすめです。
「先生が血圧のために控えた方が良いと言っていたよ」「看護師さんが、こうすると足腰に良いと勧めてくれたよ」のように、第三者の言葉を積極的に活用しましょう。
家族からの意見ではなく、権威のある第三者の言葉を借りれば、こだわりの強い高齢者も客観的な事実として受け入れやすくなります。
代替案を提示する
こだわりが強い高齢者との接し方の4つ目は、代替案を提示する方法です。
高齢者がこだわっているものや行動を取り上げたり、禁止したりするだけでは、強い喪失感や反発を与える恐れがあります。
こだわりの対象が高齢者の心のよりどころになっているケースも多いため、何かをやめさせたい場合は代替案を提示してあげましょう。
例えば、運転免許の返納を渋っている高齢者に対して、「運転はしないで」と制限をかけるだけの対応は好ましくありません。
「代わりにタクシーチケットをあげるから使って」「一緒にバスで買い物に行こう」のように、新しい方法を提案するのがおすすめです。
また、高齢者の車や自転車の運転をやめさせたいと考えている方は、以下の記事も参考にしてください。
認知症による「こだわり」と加齢による「頑固さ」の違い
認知症による「こだわり」と加齢による「頑固さ」の違いについて解説していきます。
まず、一般的な加齢による頑固さは、高齢者の性格の延長線上にあります。
こだわりが強くなったとしても、「使いやすいから」「自分のやり方があるから」など高齢者なりの理由があり、内容に一貫性があるのが特徴です。
認知症に見られるこだわりは、「常同行動」と呼ばれている病的な症状であるケースが多いです。
常同行動は、高齢者の意志や理屈などには関係なく、同じ行動を繰り返してしまう状態を指します。
例えば「毎日決まった時間に同じ道を歩き続ける」「毎日同じ食事しか食べない」などの行動があります。
また、雨の日や体調不良の際にも行動を止めることはなく、制止されるとパニックに陥るケースも少なくありません。
高齢者のこだわりが強い理由が加齢なのか、認知症なのか分からない場合は、医療機関の受診をおすすめします。
こだわりが強い高齢者に疲弊しないための方法3選
こだわりが強い高齢者の対応に疲れてしまうという方も少なくありません。
ここからは、こだわりが強い高齢者に疲弊しないための方法として、以下の3つを詳しく解説していきます。
- 完璧な対応を目指さず適度に受け流す
- デイサービスやショートステイを活用して物理的な距離を置く
- 同じ悩みを持つコミュニティや相談窓口を利用する
高齢者と長期的に良好な関係を維持するためにも、しっかりと確認しておきましょう。
完璧な対応を目指さず適度に受け流す
こだわりが強い高齢者に疲弊しないための方法1つ目は、完璧な対応を目指さず適度に受け流すことです。
真面目で責任感の強い方ほど「ちゃんと話を聞かないと」「こだわりも尊重しなければ」と完璧な対応を目指しがちです。
しかし、認知機能が低下していてこだわりが強い高齢者に対して、常に完璧な対応を続けるのは難しいため、適度に受け流すスキルが大切になります。
例えば、同じ話を繰り返されても「そうなんだね」「すごいね」と相槌をうつだけでも問題ありません。
高齢者の介護を長く続けていくためにも、スルーする力を意識的に身に付けていきましょう。
デイサービスやショートステイを活用して物理的な距離を置く
こだわりが強い高齢者に疲弊しないための方法2つ目は、デイサービスやショートステイを活用して物理的な距離を置くことです。
こだわりが強い高齢者に対するストレスが限界を迎える前に、物理的に離れる時間を作ってみましょう。
しかし、「親を施設に入れるのはかわいそう」といった罪悪感から、サービスの利用を控える方も少なくありません。
多くの方が悩んでいる問題であるため、別の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
同じ悩みを持つコミュニティや相談窓口を利用する
こだわりが強い高齢者に疲弊しないための方法3つ目は、同じ悩みを持つコミュニティや相談窓口を利用することです。
介護の悩みは経験がない方には理解されづらく、一人で抱え込んでしまい孤独になりがちです。
「辛いのは自分だけだ」と思い詰めると、精神的に追い詰められてしまいます。
こだわりが強い高齢者の介護に困っている場合は、同じ境遇の人が集まるコミュニティや地域包括支援センターなどを利用するのがおすすめです。
同じ悩みを持つ方から共感してもらえるだけで、気持ちが楽になります。
こだわりが強い高齢者とうまく付き合おう｜まとめ
本記事では、高齢者のこだわりが強い理由について詳しく解説しました。
こだわりが強いのは、脳機能の低下や不安感などさまざまな理由があります。
高齢者のこだわりに対して否定的な態度を取ってばかりいると、関係性が悪化する恐れもあるため、こだわる気持ちを理解してあげるのが大切です。
記事内で紹介した「こだわりが強い高齢者との具体的な接し方」を参考にしながら、関係を維持しましょう。
また、介護者が疲弊しないためにも、完璧な対応を目指さずに弱音を吐く場所を設けるなどの対応も重要です。
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