高齢者が嘘をつくのはなぜ？認知症やそれ以外の原因と対処法を解説

「高齢者が嘘をつく機会が増えた」

「嘘に振り回されて疲れを感じている」

高齢者が嘘をつくことで、周囲の人が振り回されてしまうケースも少なくありません。

高齢者が嘘をつく原因を知れば、上手く対処できる可能性が高まります。

本記事では、高齢者が嘘をつく原因として、認知症とそれ以外の要因について解説していきます。

また、高齢者が嘘をつく行為への対処方法も詳しく解説しているので参考にしてください。

高齢者が嘘をつくのは認知症が原因かも

高齢者が嘘をつく原因は、認知症である可能性が高いです。

認知症には様々な症状がありますが、主な症状として「認知機能の低下」が挙げられます。

認知機能の低下によって、記憶が欠けてしまったり、新しい物事を覚えられなくなったりするなどの症状が現れます。

認知症は、通常の物忘れとは異なり、忘れたこと自体を忘れていることが多いです。

また、高齢者の認知症は、まったく記憶が残っていないため、嘘をついて話のつじつまを合わせるなどの行動も増加します。

認知症は治療をすれば進行を遅らせられるため、以下のような症状がみられる場合は、早期に受診することがおすすめです。

• 体験全体を忘れる
• 新しい出来事を記憶できない
• ヒントを与えても思い出せない
• 物忘れの自覚がない

忘れていること自体の記憶がないため、高齢者の作り話で会話が成り立ってしまう場合もあります。

その場合、認知症の発見が遅れるケースも少なくありません。

高齢者の認知症の症状などについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

高齢者が嘘をつく原因が認知症ではない場合

高齢者が嘘をつくのは、認知症だけが原因とは限りません。

認知症以外の原因として、以下の3つのケースが考えられます。

• 周囲から注目してもらいたい
• 認知症以外の病気や薬の副作用
• プライドを保つため

嘘をつく原因が認知症以外のケースについて解説していくので、参考にしてください。

周囲から注目してもらいたい

高齢者が「自分は孤独だ」「誰にも注目してもらえない」など、孤独感や疎外感を感じている場合、嘘をついてしまう可能性があります。

特に歳を取ると子供が自立したり、友人や知人が亡くなったりして、周囲とのかかわりが減少しがちです。

また、コミュニケーションを取る機会を増やすために、嘘をついて周囲からの注目を集めようと考えている高齢者の方もいます。

例えば、「最近、夜遅い時間に怪しい物音がする」「体調がすぐれない」など、周囲から心配してもらいたいと思って嘘をついている可能性があります。

身の回りの家族などを困らせるための嘘ではなく、ただ注目してもらいたいことが理由になっている可能性もある点を理解しておきましょう。

認知症以外の病気や薬の副作用

認知症以外の病気や薬の副作用によって、高齢者が嘘をついている可能性も考えられます。

例えば、統合失調症を患っている場合、幻覚や妄想などの症状があるため、周囲から見ると嘘をついているように見えてしまう場合があります。

また、パーキンソン病やうつ病などに用いられる薬剤を服用している方は、「せん妄」という副作用が発生するケースも少なくありません。

せん妄の具体的な症状は、以下の通りです。

• 見当識障害（日時や場所が分からない）
• 幻覚（実際には無いものが見える）
• 注意傷害（1つの物事に集中できない）
• 認知障害（記憶が抜け落ちる）

せん妄では、このような症状が現れるため、高齢者が嘘をついているように見える場合があります。

高齢者の嘘が気になる場合は、持病や服用している薬剤を確認してみることがおすすめです。

薬剤や認知症以外の病気が原因かもしれないと感じた場合は、病院を受診してみましょう。

プライドを保つため

高齢者は、プライドを保つために嘘をつく場合があります。

年齢を重ねるごとに、自分ひとりでできる物事が少なくなってしまい、プライドが傷ついている高齢者も少なくありません。

具体的には「自分なら以前と同じようにできるはずだ」という気持ちを捨てられずに、嘘をついてしまうケースがあります。

プライドを保つことが目的であり、高齢者は悪意があって嘘をついているわけではないため、優しく声をかけてあげることが大切です。

高齢者が嘘をつく場合に取るべきではない行動

高齢者が嘘をついていると、つい言葉が強くなってしまったり、無視をしたりしてしまいたくなる方もいるでしょう。

しかし、高齢者が嘘をついていても、以下のような行動は取るべきではありません。

• 嘘をついたことを責める
• 無視をする

それぞれの行動を取るべきではない理由なども詳しく解説していくので、高齢者が嘘をつくことに困っている方は参考にしてください。

嘘をついたことを責める

高齢者が嘘をついていたとしても、嘘をついたことを責めるべきではありません。

高齢者が嘘をつく場合は、悪意がないケースがほとんどです。悪意のない嘘を責めてしまうと、「自分が信用されていない」と感じる可能性もあります。

また、心を閉ざしてしまったり、自己防衛のために嘘がエスカレートしたりするなど、悪化させる要因にもなりかねません。

さらに、責められることで高齢者の孤独感が増加すると、周囲に注目してもらいたいという気持ちから、嘘をつく頻度が増加するリスクも考えられます。

嘘をついたことを責めないように気を付けておきましょう。

無視をする

高齢者が嘘をつく場合に取るべきではない行動として、無視をすることが挙げられます。

高齢者の発言が嘘だとしても、無視をすると「自分の話を聞いてもらえない」「何を伝えても無駄だ」と感じてしまいます。

また、高齢者は若い頃よりもできない物事が増えるため、周りから承認される機会が少ないです。

そこで発言を無視されると、自分は必要とされていないと思うなど、高齢者の自己肯定感を下げる要因になりかねません。

高齢者の尊厳を保つためにも、無視しないようにすることがおすすめです。

高齢者が嘘をつく場合の対処方法

高齢者が嘘をつく場合の対処方法として、以下の4つを解説します。

• しっかりと聞いてあげる
• 別の話題に変える
• 高齢者のプライドを傷つけないようにする
• 介護サービスなどを利用する

それぞれの対処方法を活用して、嘘をつく高齢者と上手くかかわっていくことが大切です。

しっかりと聞いてあげる

高齢者が嘘をつく場合でも、しっかりと聞いてあげるようにしましょう。

高齢者が嘘をつく原因でも紹介したように、悪意があって嘘をついているわけではありません。

そのため、発言を否定したり、無視をしたりすると、高齢者の自尊心を傷つけてしまいます。

例えば、「夜に物音がしたから泥棒がいるかもしれない」と言われた場合は、高齢者の不安な気持ちに共感してあげるのがおすすめです。

「それは心配だね、夜は戸締りを確認しておくね」など、優しい言葉で高齢者の嘘を受け入れてあげましょう。

嘘に共感すれば、信頼関係を構築できるため、高齢者の孤独感が軽減して、嘘をつく機会を減らせる可能性もあります。

別の話題に変える

高齢者の嘘に対する返答に困った場合は、別の話題に変えることもおすすめです。

すぐに話を変えると無視をされたと感じてしまうため、「それは不安だね」など簡単な相槌をしてから話題を変えましょう。

高齢者の不安な気持ちや孤独感が嘘をつく原因である可能性があるため、明るい話題に変えて気持ちをリフレッシュするのが効果的です。

例えば、テレビを見るのが好きな高齢者であれば、「この前の番組は面白かったね」など、高齢者の好みに合わせて明るい話題に変えてみましょう。

高齢者は自分の話を聞いてもらえることで、不安や孤独を感じづらくなります。これにより、高齢者が嘘をつくことも少なくなる可能性があります。

高齢者のプライドを傷つけないようにする

高齢者が嘘をつく場合でも、プライドを傷つけないようにすることが大切です。

プライドを守るために嘘をついている可能性もあるので、高齢者がつく嘘の間違いを指摘するなど自尊心を下げるような行動は避けておきましょう。

自尊心の低下により、嘘をつく頻度が増加したり、信頼関係が崩壊したりするリスクがあります。

プライドを傷つけるのではなく、高齢者の嘘にも共感してあげたうえで「別の意見もあるみたいだね」などの声をかけてあげましょう。

また、高齢者の経験や知識などを褒めれば、プライドを傷つけずに、自己肯定感を高めてあげることもできます。

介護サービスなどを利用する

「高齢者の嘘への対応がわからない」と悩んでいる方も少なくありません。

高齢者が嘘をつく行為に関して、家族内で解決するのが難しい場合は、介護サービスなどの利用を検討するのもおすすめです。

介護スタッフは、高齢者のサポートに関する専門知識を持っているため、嘘をつく行為に上手く対処してもらえるでしょう。

また、嘘をつく高齢者と介護スタッフの間で信頼関係が生まれれば、嘘をつく原因を排除できる可能性が高まります。

これにより、普段の生活で高齢者が嘘をつく機会が減少して、家族などにかかる負担を軽減できます。

高齢者が嘘をつく原因を理解して上手く対処しよう

高齢者が嘘をつく原因として、認知症やそれ以外の病気や薬の副作用、注目してもらいたい気持ちなど、さまざまなものがあります。

高齢者が嘘をつく原因を理解しておけば、適切な対処ができます。

本記事で紹介した対処方法などを参考にしながら、嘘をつく高齢者と上手く付き合っていきましょう。

また、家族だけで対応できないと感じた場合は、介護サービスなどを利用して負担を減らすことが大切です。