高齢者向け栄養補助食品で健康管理｜不足しがちな栄養素と4つの選び方

「高齢の親の食事量が減ってきて栄養が足りているか心配…」
「どんな栄養補助食品を食べてもらえばいいの？」

上記のように高齢者のお世話をしていて栄養不足が心配になり、栄養補助食品を与えるかどうか迷った経験はありませんか。

高齢になると、食事量の減少や消化機能の低下により、気づかないうちに栄養不足に陥るケースが増えています。

1日3食食べているのに栄養が足りていない状態は、食事量の問題ではなく、必要な栄養素のバランスが崩れていることが原因です。

高齢者の健康維持において栄養補助食品は、通常の食事では摂取しにくい栄養素を効率的に補うことができます。

本記事では、高齢者に必要な栄養素や栄養補助食品の選び方、摂取時の注意点について詳しく解説します。

高齢者の栄養状態と栄養補助食品の重要性

高齢者には不足しやすいため積極的に摂取したい栄養素があります。

栄養補助食品の摂取により、通常の食事に加えて、より豊富な栄養を取り入れることが可能です。

ここでは高齢者に不足しがちな栄養素や体の変化、栄養を摂取する重要性について解説します。

高齢者に不足しがちな栄養素ランキング

厚生労働省の調査によると、50～69歳の男女別高齢者が調査期間12日間のうち、不足しやすい栄養素は以下の結果でした。

順位	栄養素	摂取基準	男性（208人中） 不足者の割合	女性（251人中） 不足者の割合
1位	カルシウム	600mg／日	46.2%	45.0%
2位	ビタミンC	85mg／日	19.7%	15.1%
3位	鉄	男性：6g／日 女性：5.5g／日	1.0%	2.0%

引用：厚生労働省「日本人の食事摂取基準（2025年版）」策定検討会報告書

表の不足している栄養素を効率的に補うために、栄養補助食品の活用が有効です。

高齢になると起きる栄養吸収の変化

加齢による身体の変化は、栄養の吸収・利用効率に大きく影響します。

食事中の唾液分泌量の減少により食べ物の消化が不十分になり、胃酸分泌の低下によってたんぱく質の分解能力が低下します。

また、腸の消化と吸収を助ける「蠕動（ぜんどう）運動」が弱くなることで、栄養素の吸収効率が低下し、同じ量を食べても若い頃と比べて体内に取り入れられる栄養素が減少してしまいがちです。

さらに、味覚や嗅覚の変化により食欲が低下し、食事量自体が減少する傾向があります。

体の変化は個人差があるものの、多くの高齢者に共通して起こりうるのです。

低栄養によるフレイルやサルコペニアなどのリスク

高齢者が低栄養状態に陥ると、フレイルとサルコペニアのリスクが高まります。

フレイルとは、体重減少・疲れやすさ・筋力の低下などがみられ、要介護になる可能性が高い一歩手前の状態です。

またフレイルの状態が続くと、筋肉量の低下「サルコペニア」や、骨・関節・筋肉の障害で日常生活に支障をきたす「ロコモティブシンドローム」につながる可能性があるといわれています。

フレイル予防には、食事・運動・社会性などが関連しているとされ、以下のページで詳しく解説しているので、あわせて読んでみてください。

高齢者向け栄養補助食品の4つの選び方

高齢者向け栄養補助食品を選ぶ際は、以下の4つの選び方を基準に好みの商品を見つけましょう。

• 摂取したい栄養成分で選ぶ
• 味・飲みやすさ・形状で選ぶ
• 自分の体調や薬との相性で選ぶ
• 継続しやすい価格帯と効果のバランスで選ぶ

それぞれについて詳しく解説します。

摂取したい栄養成分で選ぶ

栄養補助食品を選ぶ際は、まず自身に不足している栄養素を把握することが重要です。

高齢者が1日に必要な栄養素の量は、男女や年齢によって微量の差があります。

たんぱく質・ビタミンD・カルシウムなどが普段どのくらい摂取できているか確認し、必要な量を摂取できているか照らし合わせてみましょう。

味・飲みやすさ・形状で選ぶ

高齢者にとって継続しやすい味や形状は、栄養補助食品選びで重要なポイントです。

市販の栄養補助食品は、ドリンク・ゼリー・粉末などの種類で販売されています。

ドリンクタイプは、水分補給も同時にできる利点があり、嚥下機能に問題がない場合は最も摂取しやすい形状です。

常温でも飲みやすく、味のバリエーションも豊富です。

ゼリータイプは、嚥下に不安がある方でもむせにくいので、摂取しやすい特徴があります。

粉末タイプは、料理や飲み物に混ぜて使用でき、味を変えながら摂取できるため飽きにくいです。

それぞれの特徴を活かした栄養補助食品を選択してください。

高齢者が頻繁にむせる場合は、以下の記事をあわせて読み、対策を行いましょう。

自分の体調や薬との相性で選ぶ

高齢者の多くは薬を服用しているため、栄養補助食品との相互作用に注意が必要です。

かかりつけ医に、栄養補助食品を摂取しても大丈夫か相談しましょう。

相談の際に、自分に合った商品または特徴を聞くのも参考になります。

カロリーを抑えた製品や塩分が少ない製品を選ぶと、健康管理をサポートできます。

栄養補助食品の成分が自分の体に過剰な影響を与えないよう、医師や薬剤師への相談は必須です。

継続しやすい価格帯と効果のバランスで選ぶ

栄養補助食品は継続摂取が必要なため、経済的な負担と商品の効果を考慮した選択が大切です。

価格・成分の質・容量など継続しやすさを総合的に判断し、まずは2〜3週間試して体調の変化を見ながら継続を検討しましょう。

栄養補助食品のなかでも機能性表示食品や医師監修の製品は高価格帯が多く、成分の品質や安全性も高い傾向にあります。

しかし、経済的な事情を考慮すると基本的な栄養素を補給でき、経済的負担が少ない製品も選択肢の一つです。

自分に合ったバランスの取れる成分配合で、継続しやすい価格設定の製品を選びましょう。

栄養補助食品の効果的な摂取タイミングと活用法

栄養補助食品を摂取する際は、タイミングも重要です。

栄養を適切に補うために、以下のことを意識しましょう。

• 1日の中での効果的な摂取タイミング
• 食事との組み合わせで吸収率アップ
• 季節に合った栄養補助食品をプラス
• 高齢者が食欲不振時のポイント

1日の中での効果的な摂取タイミング

栄養補助食品の効果を最大化するためには、適切な摂取タイミングが重要です。

朝の摂取は、1日の活動に必要なエネルギーと栄養素を補給でき、ビタミンB群やたんぱく質の摂取に適しています。

特に、朝食が軽めの方にはおすすめです。

食間の摂取は、血糖値の急激な変動を防ぎ、栄養素の吸収効率を高めます。

午前10時頃や午後3時頃のおやつのタイミングが理想です。

就寝前の摂取は、睡眠中の筋肉修復と成長ホルモンの分泌をサポートします。ただし、カフェインを含む製品は避けましょう。

高齢者の栄養を助けるおやつの重要性については、こちらの記事でも紹介しています。

食事との組み合わせで吸収率アップ

栄養補助食品の効果を高めるためには、食事との組み合わせも重要です。

同時に摂取すると相乗効果がある食品や、反対に一緒に食べない方がいいものもあります。

たとえば、カルシウムは、マグネシウムと2：1の比率で摂取すると効果的で、食事中の摂取が吸収率を高めます。

また鉄分は、ビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が向上しますが、コーヒーや紅茶に含まれる「タンニン」との相性はよくありません。

より良い組み合わせを把握することで、食事に対する意識も変わります。

季節に合った栄養補助食品をプラス

季節の変化に合わせて栄養補助食品を調整することで、より効果的な健康管理が可能です。

季節	栄養補助の目的	摂取したい栄養素
春	新陳代謝が活発になる時期の活力サポート	ビタミンB群、たんぱく質
夏	水分・電解質の補給	水分、ミネラル（ナトリウム、カリウムなど）
秋	体力づくりと免疫力アップ	ビタミンC、ビタミンD、亜鉛
冬	日照不足によるビタミンD不足の補填	ビタミンD

高齢者の体調や栄養状態は、季節の影響を受けやすくなっています。

同じ栄養補助食品を一年中使い続けるのではなく、気温や食欲の変化にも柔軟に対応するために、必要な栄養素を意識的に補いましょう。

高齢者が食欲不振時のポイント

食欲が低下した際の栄養補助食品活用法には、以下のような工夫が効果的です。

• 少量で頻度を増やす：一度の摂取量を減らし、数回に分けることで胃腸への負担を軽減
• 温度調整：冷たい製品の方が飲みやすい場合と常温の方が良い場合があり、個人の好みに合わせて調整
• 味の変化：調味料を加えて味に変化をつける

「お腹が空いてない」「食欲がない」と食事を抜くことは、高齢者にとってリスクがあります

食欲がなくても食べられる工夫を行って、栄養を補給しましょう。

よくある質問

ここでは、栄養補助食品に関するよくある質問を3つ紹介します。

栄養補助食品は毎日食べても大丈夫？

栄養補助食品の毎日の摂取については、製品の用法・用量を守れば基本的に問題ありません。

ただし、以下の点に注意が必要です。

過剰摂取にならないよう、他のサプリメントや薬との重複成分を確認しましょう。

特に脂溶性ビタミン（A・D・E・K）は体内に蓄積されやすく、「過剰症」のリスクから逃れるためにも推奨量を超えないよう注意が必要です。

また体調の変化を観察し、異常を感じた場合は一時的に摂取を中止し、医師に相談することが大切です。

定期的な健康診断で栄養状態を確認し、必要に応じて摂取量を調整しましょう。

サプリと併用してもいいの？

栄養補助食品とサプリメントの併用は可能ですが、成分の重複による過剰摂取に注意が必要です。

重複しやすい成分として、ビタミンC、ビタミンD、鉄分、カルシウムなどがあります。

栄養成分は複数の製品に含まれている可能性が高く、総摂取量を計算して上限値を超えないよう管理しましょう。

サプリとの併用時の注意点として、異なるメーカーの製品を使用する場合は、成分表示を詳しく確認し、不明な点は薬剤師に相談がおすすめです。

栄養補助食品だけに頼っても大丈夫？

栄養補助食品は、食事の代替品ではありません。

バランスの取れた食事を基本とし、栄養補助食品は不足しがちな栄養素を補う役割として活用してください。

栄養補助食品だけでは補いにくい栄養素もあります。

まずはいきなり栄養補助食品を増やすのではなく、食事内容の改善を図りましょう。

食事を見直しても不足する場合に、栄養補助食品で補う考え方が適切です。

高齢者の健康を支える栄養補助食品という選択

高齢者の健康管理において、栄養補助食品は役に立つ選択の一つです。

加齢による身体機能の変化や食事量の減少により、必要な栄養素を食事だけで摂取することが困難になるなか、栄養補助食品は効率的な栄養補給を可能にします。

ただし食事の代替品ではなく、バランスの取れた食事を基本とした補完的な役割であることを忘れてはいけません。

栄養補助である点を理解し、自身の体調や生活状況、好みに合わせた製品を選ぶことが健康寿命の延伸につながります。

また、医師や薬剤師との相談を通じて、安全で効果的な利用を心がけてください。

栄養補助食品の味や効果が気になる方は、まず「お試しセット」や少量サイズから始めてみましょう。

栄養補助食品を適切に活用することで、高齢者の健康でより良い生活の実現に役立ちます。