高齢者の呂律が回らないのは病気のサイン？見分け方と日頃の対処法を解説

「最近、親が会話中話しにくそう…」
「高齢の親の言葉が聞き取りにくくなった」
このようなことを会話中に感じて、呂律が気になっていませんか？

本記事では、高齢者の呂律が回らなくなる原因と緊急性があるかの見分け方、日頃の対処法について紹介します。
最後まで読むと、呂律障害に関する適切な知識が身につき、大切な家族の異変にいち早く気づけるようになります。

高齢者の呂律が回らない状態とは？

加齢に伴うよくある体の変化として、呂律が回らなくなることがあります。

ここでは、高齢者の呂律が回らない状態がどのようなものか、具体例を交えて解説します。

年齢に関係なく起こるが高齢者は注意が必要

呂律が回らない状態は、緊張や疲労が溜まっているなどが要因になることもあり、年齢に関係なく起こります。

しかし、高齢者が呂律が回らない場合は、特に注意が必要です。

急に呂律が回らなくなると命に関わる病気のサインである可能性が高く、適切な医療機関への受診が必要になります。

高齢者の健康管理において、言語障害は見過ごせない重要な症状の一つといえるでしょう。

高齢者の呂律が回らない状態の具体例

高齢者によくある呂律が回らない状態は、以下のような様子が伺えます。

• 言葉につまる
• 舌がもつれているように感じる
• 話し方が不自然で聞き取りにくい
• 電話中に急に言葉が明瞭でなくなった
• 食事中に水や食べ物が口からこぼれやすくなった
• 「何を言っているか分からない」と周囲から指摘される

高齢者の異変には、日常生活で家族が気づくケースが多いので、コミュニケーションを欠かさず積極的に取るようにしましょう。

高齢の方とのコミュニケーションは、以下の記事を意識すると取りやすくなるので、合わせて読んでみてください。

高齢者に多い呂律が回らなくなる3つの原因

高齢者に多い呂律が回らなくなる原因として、以下の3つが挙げられます。

• 脳梗塞などの脳の疾患
• 認知症の初期症状
• ストレスや自律神経の乱れ

原因の中には緊急性の高いものもあるので、よく把握しておきましょう。

脳梗塞などの脳の疾患

高齢者の呂律が回らない状態で、最も警戒すべきは脳血管障害です。

特に脳梗塞は「突然の呂律障害が前兆として現れることが多い疾患」と言われています。

脳の言語中枢や発声に関わる部分が障害を受け、呂律が回らなくなるのです。

さらに、以下の併発症状にも注意しましょう。

• 片側の顔・手・足のしびれや麻痺
• 激しい頭痛
• 吐き気や嘔吐

併発症状が呂律障害と一緒に現れた場合は、脳梗塞や脳出血の可能性が非常に高いため、すぐに救急車を呼ぶべき状態と言えるでしょう。

認知症の初期症状

認知症の初期症状として、呂律の乱れが現れることもあります。

言語機能の低下によるもので、以下のような特徴が現れはじめるでしょう。

• 会話の辻褄（つじつま）が合わなくなる
• 簡単な言葉が出てこなくなる
• 同じ内容の会話が繰り返される
• 言葉の選び間違いが増える（「冷蔵庫」を「テレビ」と言うなど）

家族が「なんとなく話し方がおかしい」と感じるケースが多いのも特徴です。

高齢者の変化は徐々に進行するため、気づきにくいとされています。

ストレスや自律神経の乱れ

高齢者は病気がなくても睡眠不足・更年期・服薬などで、一時的に呂律が回らなくなることもあります。

特に以下のような原因が考えられます。

• 強いストレスや緊張状態
• 睡眠不足や過度の疲労
• 自律神経の乱れ
• 薬の副作用

高齢者は他の疾患も患っていることがあるため、長く続く場合は医師への相談が望ましいです。

高齢者の呂律の乱れと認知症との関係性

ここからは高齢者の呂律が回らなくなる症状と、認知症との関係性について解説します。

呂律が回らないは認知症初期に現れやすい症状の一つ

認知症の診断基準の一つに「言語機能の低下」が挙げられます。

脳の認知機能が低下すると、コミュニケーションに影響が現れ始めるでしょう。

認知症による呂律が回らない状態には、以下のような特徴があります。

• 会話が成立しない
• 文章を組み立てられない
• 何を言いたいか自分でもわからない
• 「あれ」「それ」で会話し単語が出ない

ぼーっとしていて言葉が出にくいなど併発症状にも注目

認知症の症状には呂律が回らない状態だけでなく、併発する症状があります。

呂律の乱れとともに以下の行動が現れはじめたら、認知症の可能性が高いです。

• 集中力が続かない
• 常にぼんやりしている
• 簡単な計算ができなくなる
• 日常の動作がぎこちなくなる
• 性格が変わったように感じる

ただし、認知症以外の病気にも見られる症状でもあるため、素人判断せずに医師の診断を受けるようにしましょう。

高齢者の呂律が突然回らなくなった緊急時の対応

高齢者の呂律が突然回らなくなった時は、緊急事態であることが多いです。

ここからは、緊急時の対応について解説します。

救急車を呼ぶべき症状とは

高齢者の呂律が突然回らなくなり、以下の症状がある場合は、躊躇せずに119番通報しましょう。

• 顔の片側がゆがんでいる
• 言葉がまったく出ない
• 意識がはっきりしない
• 手足に力が入らない

特に高齢者の場合、脳梗塞など時間との勝負になる疾患の可能性が高いため、迷った場合も救急車を呼ぶことをためらわないでください。

脳梗塞の可能性があるサイン

脳梗塞は発症から4.5時間以内の治療が効果的とされているため、「様子を見よう」は禁物です。

高齢者に脳梗塞の疑いがある場合、「FAST（ファスト）」というチェックテストが有効とされています。

• Face（顔）：笑ってもらい、顔の片側が下がっていないか
• Arm（腕）：両腕を挙げてもらい、片方が下がってこないか
• Speech（会話）：簡単な言葉を復唱してもらい、呂律が回るか
• Time（時間）：時間との勝負

参考：大阪府摂津市「何かへん・・おかしいな・・もしかして・・脳卒中！？」

その他の見逃せない危険なサイン

高齢者の呂律が回らなくなるとともに、受診した方がよい症状があります。

下記は症状の一部のため、高齢者にいつもと違う様子が見られたらおすすめです。

• 発熱
• 頭痛
• 吐き気
• 意識がぼんやり

高齢者の中には受診を嫌がる方もいるかもしれませんが、後遺症のリスクを最小限に抑えるために必要であると理解してもらいましょう。

呂律が回らない高齢者に対する対処法・改善方法

呂律が回らない高齢者への対処法や、改善方法について一つずつ紹介します。

簡単チェックで日常から変化に気づく

高齢者の異変に一番最初に気づけるのは、家族です。

呂律障害に該当する言動をあらかじめ知っておくと、気になった時に確認できます。

以下に該当する項目があれば、受診しましょう。

• 電話での会話が聞き取りにくくなった
• 言い間違いや言葉の選択ミスが増えた
• 会話が噛み合わなくなった
• 同じ質問を繰り返すようになった
• 食事中にむせることが増えた

受診のタイミングと科目の選び方

高齢者の呂律が回らないことが気になったら受診がお勧めです。

しかし、何科に行ったらよいか不明な方も多いでしょう。

まずはかかりつけ医に相談し、他の症状もあわせて以下のような専門医の紹介を受けるのが基本的な流れです。

• 脳神経内科：脳梗塞や脳出血などの脳疾患が疑われる場合
• 耳鼻咽喉科：発音器官（舌や喉など）に問題がある場合
• 精神科・心療内科：認知症やうつ病など精神的要因が疑われる場合

生活習慣の見直しとストレスケア

高齢者の生活習慣の見直しとストレスケアで、呂律障害の予防や再発防止ができる傾向にあります。

適度な運動・十分な睡眠・バランスの良い食事を心がけましょう。

ストレスの軽減には、趣味を楽しむことも有効です。

以下の記事では、高齢者におすすめの趣味を紹介しているので、合わせて読んでみてください。

呂律トレーニング・リハビリの実践

高齢者の呂律の改善や維持を行うには、トレーニングが欠かせません。

唾液の分泌を促したり、口や舌の筋肉を鍛えたりする必要があります。

簡単にできるトレーニング「あいうべ体操」が効果的です。

「あ」「い」「う」と大きく口を広げて動かし、最後に舌を突き出すように「べー」と行いましょう。

会話の機会が減ること自体が筋肉の老化につながるので、積極的な会話が大切です。

参考：一般社団法人日本訪問歯科協会「口腔機能の衰えと滑舌」

呂律が回らないときの応急対応と日頃からできる対策

高齢者の呂律が急に回らなくなった場合は、迅速な対応が重要です。

また、日頃からできる予防・改善対策についても紹介します。

急に呂律が乱れたときの対応

高齢者の呂律が以下の症状を伴って突然乱れた場合は、緊急性が高いと考えられます。

• 顔や手足のしびれ・麻痺
• 意識がもうろうとする
• 激しい頭痛や吐き気

これらは脳梗塞や脳出血のサインである可能性があるため、すぐに救急車を呼びましょう。

日常的にできる呂律障害の予防・対策

高齢者の呂律の乱れを予防・改善するために、以下のような対策が有効です。

• バランスの取れた食事を心がける
• 適度な運動（散歩や口の体操など）を取り入れる
• 口腔ケアを徹底する（入れ歯の調整など）
• 日常的な会話で脳と言語機能を刺激する
• ストレスを溜めない生活習慣を整える

日頃から規則正しい生活を取り入れ体調を管理し、定期的な健康診断で体の変化に早く気づけるようにしておきしましょう。

また、高齢者の口腔ケアについて詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しているのでぜひ参考にしてください。

高齢者の呂律の乱れは見逃さないことが大切

高齢者の呂律の乱れは加齢が原因だけではなく、脳梗塞や認知症などの重大な病気のサインかもしれません。

特に、突然の呂律障害は命に関わる緊急事態であることを覚えておきましょう。

日頃から家族とのコミュニケーションを大切にし、小さな変化も見逃さないようにしておくことが重要です。

もし呂律の異変に気づいても、早めに対処すれば深刻なリスクを防ぐことができます。

大切な家族の変化に優しく寄り添い、「なんとなく話しにくそう」と感じたときこそ、大切な家族の健康を守るための行動を心がけましょう。