老人性難聴は何が原因で起こる？症状と一般的な対応・予防対策を解説

「高齢の親が老人性難聴になっている気がする」

「そもそも原因は何？予防法もあるなら知りたい」

上記のようにお悩みではありませんか？

年齢とともに少しずつ進行する「老人性難聴」は、聞こえにくさだけでなく、日常会話のストレスや社会的な孤立にもつながることがあります。

この記事では、老人性難聴の具体的な症状や原因を解説します。

一般的な対応や治療法に加え、予防対策についても詳しく紹介しているので、ご家族の耳の健康を守るための第一歩として、ぜひ参考にしてください。

老人性難聴とは

老人性難聴は、年齢を重ねることで音を感じ取る役割を持つ「有毛細胞」が徐々に減少し、それに伴って聴力が低下していく状態のことです。

「加齢性難聴」とも呼ばれ、突然聞こえなくなるわけではなく、少しずつ音が聞き取りづらくなるのが特徴です。

そのため自分では異変に気づきにくく、家族や周囲の人から「耳が遠くなったね」と言われて初めて気づくケースもよく見られます。

参照：加齢性難聴の機序｜ 日本耳鼻咽頭科学会

以下の記事では、難聴の高齢者に対するコミュニケーションの取り方を解説しているので、合わせて参考にしてください。

老人性難聴の症状

老人性難聴は、加齢によって少しずつ音が聞き取りにくくなることがあります。

特に最初は高い音域、たとえば電子体温計のような電子音（4〜8kHz）が聞こえにくくなる傾向がありますが、この段階では自覚しづらいのが一般的です。

進行すると、会話などで使われる中音域（1kHz前後）の音も聞こえにくくなり、難聴に気づくようになります。

また、聴力の低下によって脳への音の刺激が減ることで、「ジーッ」という雑音や「キーン」という高音など、耳鳴りを感じることもあります。

老人性難聴の原因

老人性難聴の主な原因は、耳の奥にある「蝸牛（かぎゅう）」という部分の感覚細胞が、年齢とともに少しずつ減ってしまうことだと考えられています。

感覚細胞は、耳から入ってくる音を感じ取る大切な役割を持っています。また、蝸牛から脳へ音の信号を伝える神経細胞も減ったり変化したりするほか、脳自体の年齢による変化も聞こえにくさに関係しているのです。

感覚細胞や神経細胞が減る仕組みはまだ完全にはわかっていません。ですが、遺伝・高血圧・糖尿病・動脈硬化などの病気、そして大きな音を長時間聞くことや喫煙などの生活習慣が影響していると考えられています。

特に、長期間にわたって大きな音を耳にする環境にいると、老人性難聴が早く進んでしまうこともあります。

老人性難聴への一般的な対応とは

老人性難聴の対処法としては、補聴器や人工内耳などを使って耳の聞こえをサポートすることが一般的です。

補聴器を取り入れる際は、まずは聴力検査でどの周波数の音が聞きづらいかを詳しく調べます。

その結果と日常生活の状況を考慮しながら、本人に合った補聴器を選びます。

現代のデジタル補聴器は、難聴の程度に合わせて細かく調整できるのが特徴です。

補聴器が集めた音は詳細に解析され、できるだけ自然な音として伝わるように処理されます。そのため、騒がしい場所でも相手の話が聞き取りやすくなっています。

老人性難聴の治療法

残念ながら、一度失われてしまった聴覚を元に戻す手段はまだありません。

しかし、補聴器を活用することで、日常生活に必要な音の聞き取りは可能です。

静かな環境に慣れてしまった脳が補聴器からの音に慣れるには時間がかかりますが、最近では「聴覚リハビリテーション」が注目されています。

これは医師の指導のもとで難聴によって変化した脳の機能をトレーニングし、音をうるさく感じずに自然に聞き取れるようにする方法です。

個々の状態やニーズに合わせて、様々なアプローチを組み合わせて行われます。医師と相談しながら、自分に合った方法を見つけることが大切です。

老人性難聴による聴力低下への予防対策

老人性難聴の進行を遅らせたり、聞こえの低下を防いだりするためには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。

ここからは、具体的に取り入れやすい予防対策を紹介します。

大きな音への注意

老人性難聴による聴力低下への予防対策の一つ目は、大きな音に注意することです。

大きな音を長時間聞くことで音を感知する「有毛細胞」が傷つき、減ってしまう可能性があると考えられています。

たとえば、音楽ライブ・工事現場・パチンコ店など音量が大きい場所によく行く方は、耳への負担に注意が必要です。

また自宅の近くに高速道路や鉄道が通っている場合も、日常的に騒音にさらされていることがあり、知らないうちに耳に影響を与えている可能性があります。

大きな音がする環境では耳栓を使ったり、防音ガラスや防音シートを活用するなど、音から耳を守る工夫を取り入れましょう。

ストレスの発散

ストレスの発散も、老人性難聴への予防対策の一つです。

私たちは日常生活の中で、さまざまなストレスにさらされています。

精神的・身体的なものだけでなく、紫外線や空気の汚れといった環境的な要因も、知らないうちにストレスとなって体に影響を与えています。

これらすべてを完全に避けるのは難しいものです。

通常、体にはストレスから身を守る「抗酸化作用」という仕組みがありますが、過剰なストレスを受けるとこの働きが追いつきません。耳の中の有毛細胞にもダメージが及ぶことがあります。

精神的・身体的なストレスは、日頃の生活習慣や気分転換の工夫によって減らすことができます。ストレスをためこまないよう、意識して心と体を休める時間をつくりましょう。

参照：抗酸化による老化防止の効果｜健康長寿ネット

また適度な運動も、高齢者のストレス発散においてとても大切です。

以下の記事では、高齢者の運動の目安を解説しているので、合わせて参考にしてください。

食生活の見直し

聴力を守るためには、栄養のバランスが取れた食生活がとても大切です。

まず第一に、健康的な食事は体重管理にも役立ち、肥満の予防につながります。

さらに、ビタミンやミネラルなどの栄養素をしっかり摂ることで、耳の中の感覚細胞（有毛細胞）へ酸素や栄養が届きやすくなり、血行や神経の働きがスムーズになります。

一般的に耳に良いとされている栄養素は、以下のものがあげられます。

• ビタミンB群
• ビタミンE
• マグネシウム
• DHA

耳の健康を保つためには、栄養素を意識して食事に取り入れることが大切です。

特に以下のような食材に含まれているビタミンB12は、「内耳の神経の働きを助ける効果が高い」とされています。

• 豚肉
• 大豆
• ピーナッツ
• あさり
• しじみ
• レバー
• さんま

また、ビタミンEには血流を良くする働きがあり、抗酸化作用も期待できます。モロヘイヤ・かぼちゃ・アーモンド・うなぎなどが豊富な食材です。

さらに、マグネシウムは聴力に関わる有毛細胞の代謝を助けるため、難聴の予防に役立つとされています。そば・バナナ・海苔・豆乳などで手軽に摂取できます。

DHAも老化を防ぐ成分として注目されており、魚・卵・野菜などから取り入れると良いでしょう。

飲酒・喫煙の見直し

飲酒や喫煙の見直しも老人性難聴への予防対策の一つです。

たばこを吸ったりお酒を飲みすぎたりすることは、体の中の血管に負担をかけ、動脈硬化や高血圧を引き起こす原因になるといわれています。

心臓や脳などに影響を与える生活習慣病にもつながりやすく、結果として耳の血流や神経の働きにも悪い影響を及ぼす可能性があります。

聴力の低下をできるだけ防ぐためにも、日頃から禁煙を心がけたり、お酒の量を見直したりすることが大切です。

急にすべてをやめるのが難しい場合は、まずは量を少しずつ減らすことから始めてみましょう。

定期的な聴力検査

加齢にともなう聴力の低下を防ぐには、定期的な聴力検査で自分の耳の状態を知ることが大切です。

現在の聴力を把握したうえで、適切なケアや生活習慣を取り入れれば、進行を緩やかにすることが十分に期待できます。

一般的に老人性難聴は少しずつ時間をかけて進んでいくため、本人が気付きにくいケースも少なくありません。

しかし日常生活の中には、以下のような聴力が低下しているサインがいくつか見られます。

• 電話で相手の声を何度も聞き返してしまう
• テレビの音量が大きすぎると周囲から注意される
• 騒がしい場所で人との会話が聞き取りづらくなる

ご家族や身近な人に似たような様子が見られたら、早めに専門医の受診を勧めてあげると安心です。

老人性難聴の原因を知り定期的に検査を受けよう

老人性難聴は加齢によりゆっくりと聴力が低下するもので、自覚しにくいのが特徴です。

大きな音やストレス、生活習慣が進行に影響するとされ、予防には食生活の改善や適度な運動、喫煙・飲酒の見直しが有効です。

定期的な聴力検査で早期発見し、補聴器や聴覚リハビリなどの対応を行えば、コミュニケーション能力の維持や社会的孤立の防止にもつながります。

大切なご家族の「聞こえ」に不安を感じたときは、無理に責めたり焦らせたりせず、そっと寄り添う気持ちを忘れずにいましょう。少しの気づきと温かい言葉が、ご本人の安心と前向きな一歩につながります。