一人っ子がはじめる親の介護について|事前準備と支援制度の活用

「親の介護に回せるほど金銭的な余裕がない…」
「親の介護が近い将来必要なのに、一人っ子だから頼れる人がいない…」
一人っ子で周りに身内もいないなどの理由から、将来の親の介護に不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。

近年増加している一人っ子が親の介護をはじめるには、事前準備と支援制度の活用が重要です。

本記事では、親の介護に不安を抱えた一人っ子の方が、あらかじめ知っておくべき基礎知識や支援制度を解説します。

目次

一人っ子が親の介護を行う義務

親子の間には、扶養する義務があると法律で定められています。

この章では、親子の扶養について詳しく解説します。

扶養家族には介護をする義務がある

親子は民法第877条第1項で、

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

引用:e-Gov法令検索『民法』

と定められています。

原則として、子どもが親の介護を放棄することはできません。

また、特別な事情がある場合は、三親等内で扶養の義務があるとされています。

親の介護を放棄した場合、刑法第218条「保護責任者遺棄罪」に問われ、3ヶ月以上5年以下の懲役が科せられる場合があります。

参考:e-Gov法令検索『刑法』

経済的理由から扶養義務に該当しないケースがある

親子関係の扶養義務は、扶養する側が生活に困り苦しんでいる場合に免除されるケースがあります。

扶養義務免除の判断は、家庭裁判所が行います。

判断基準は、生活保護制度における「生活扶助(せいかつふじょ)基準額」が用いられるのが一般的です。

免除が認められないものの経済的負担が重くのしかかる場合は、公的な支援制度を活用しましょう。

遠方で暮らす親にもサポートが必要

親が遠方に住んでいる場合でも、定期的な訪問や連絡を通じて現状の把握や介護が必要です。

暮らしの状況に応じて、地域の介護サービスと連携するようにしましょう。

以下の記事で、遠方に暮らす高齢者の見守りについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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一人っ子が親の介護で抱えやすい4つの悩み

一人っ子の方の多くが親の介護をしていくなかで、直面する悩みがあります。

  • 精神的・身体的な負担
  • 親の介護と仕事の両立
  • 親の介護に関する意思決定の重圧
  • 将来への不安

上記の悩みを事前に知っておくだけでも、親の介護のために無理をしない対策に繋がるので把握しておきましょう。

精神的・身体的な負担

親の介護を一人ですることによる精神的ストレスや身体的な疲労は、介護者を心身ともに疲弊させてしまいます。

介護の合間に休息時間の確保や、気分転換が重要です。

親の介護と仕事の両立

親の介護と仕事の両立は、時間や体力面で難しく大きな課題となります。

特に、勤務時間と通院の時間帯が重なることが予想されます。

勤務形態や労働時間など、柔軟な働き方の検討が必要です。

親の介護に関する意思決定の重圧

一人っ子は、親の介護や医療方針を最終的に決断する立場となる可能性が高くなります。

一人っ子は家族間で相談して決めることができないため、親の意思を事前に聞き出しておく必要があります。

医療や介護の専門家からの意見も参考に、慎重に最適な判断ができるようにしましょう。

将来への不安

親の介護を続けていると、自分の将来に対する不安も感じやすくなります。

親の介護が長期化したり、自分の老後が想像できなかったりと考え込んでしまう傾向にあります。

早いうちから情報収集や準備を進めていると、将来的に自分への負担の軽減にも繋がるでしょう。

一人っ子が親の介護のために避けるべきこと3選

一人っ子で周りに頼れる人がおらず、ついついやってしまいがちな行動を3つ解説します。

以下の行動は、最終的に自分を苦しめてしまう結果となるのでなるべく避けましょう。

  • 介護のために仕事を辞める
  • 介護のために自分のお金を使う
  • 一人で抱え込む

介護のために仕事を辞める

親の介護と仕事の両立ができずに悩んでいても、安易に仕事を辞めるのは避けましょう。

会社員であれば介護休業制度を利用すると、年間最大93日の休業が可能です。

また、介護休業給付金を申請すれば、原則として休業前の賃金の67%が支給される制度があります。

数年から十数年間にわたって親の介護を経験した後、新しい仕事に就くことが難しくなるケースがあります。

希望条件の仕事に就けるかどうかは個人差があり、自身の能力や年齢が関わってきます。

介護が必要だからと今の仕事を諦めるのではなく、職場に状況を伝えて事前に相談したり、制度を活用したりして可能な限り続けるようにしましょう。

参考:厚生労働省『介護休業給付の内容及び支給申請手続きについて』

介護のために自分のお金を使う

親の介護のために自分のお金を使うことは、できる限り避けましょう。

一人っ子や独身の方であれば、自分の老後に使えるように残しておくべきです。

そのため親が100歳まで生きると想定して月額いくらで生活できるか、その範囲内での暮らし方について確認しておくことが重要です。

また、親が認知症を患って進行してしまうと、希望の介護方法や資産についての会話が成り立たなくなってしまいます。

公的支援として「介護保険制度」を利用すれば、介護に必要なサービスを受けることができます。

さらに、親の介護で家の工事が必要であれば、「住宅改修費」の補助があります。

例えば以下のような工事であれば、必要書類を提出すると支給限度基準額20万円のうち9割相当額が後日支給されます。

  • 引き戸などの扉の取り替え
  • 手すりの取り付け
  • 玄関の段差解消

上記は全国で定められているので、住んでいる地域の自治体へ確認してみましょう。

一人で抱え込む

一人で親の介護を行っていると、何でも自分で抱え込んでしまい負担となってしまいます。

介護による負担が大きくなると、うつ病を発症するリスクも高まります。

うつ病を患うと日常生活を送るのも難しくなり、親の面倒も見られなくなるという悪循環に陥ってしまいます。

はじめての介護は当然わからないことも多いため、地域包括支援センターや自治体の福祉課、介護保険の担当窓口への相談が解決策の1つです。

「親のために自分がやらないと」と無理をするのではなく、利用できる介護サービスをぜひ積極的に活用しましょう。

介護に関する悩みを何でも相談できる地域包括支援センターについては、以下の記事でも紹介しているので参考にしてください。

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親の介護の必要な手続きや流れ

親の介護が必要になった際、慌てずに済むよう介護に関する手続きや流れについて解説します。

介護サービスを受けるまでの申請から開始までは、以下のような流れで進んでいきます。

  • 介護保険制度の申請
  • 要介護度の審査と認定を受ける
  • ケアマネジャーと介護プランを考える
  • 介護サービス利用の開始

それぞれについて、1つずつ解説します。

1.介護保険制度の申請

親の介護が必要になったら、市区町村の窓口で介護保険制度の申請手続きを行いましょう。

申請時には、介護保険被保険者証が必要です。

2.要介護度の審査と認定を受ける

介護保険制度の申請後は、要介護度の判定を受けます。

市区町村の職員による訪問調査と主治医の意見書に基づき、介護認定審査会が要介護度を決定します。

要介護度は要支援1・2、要介護1~5に分けられ、段階によって利用できるサービスの範囲が異なります。

判定の誤りを防止するために、親の言動についてその都度具体的に記録しておくと、調査員に正確な状態を伝えられるのでおすすめです。

認定までの期間は、2週間から1ヶ月ほどかかるので、介護サービスの利用希望開始日から逆算して申請しておきましょう。

3.ケアマネジャーと介護プランを考える

介護サービスを受けるためには、ケアマネジャーと介護の計画を立てる必要があります。

要支援と要介護の認定によって、支援を受ける施設と作成するケアプランが異なります。

要支援認定:「地域包括支援センター」にて介護予防サービス計画書を作成
要介護認定:「居宅介護支援事業者」にて介護サービス計画書を作成

ケアマネジャーが、親子の意向を聞き出し、経済状況や自立度などを考慮して計画書を作成します。

4.介護サービス利用の開始

介護サービス計画書に基づいて、サービスが開始されます。

3ヶ月に1回程度モニタリングがあり、サービス内容に変更が必要かどうかの確認が行われます。

一人っ子が親の介護準備を早めにするメリット

一人っ子が将来の親の介護を早いうちから始めるメリットとして、以下の3つがあります。

  • 親が元気なうちに準備ができる
  • 介護の流れや支援制度を把握できる
  • 介護費用のシュミレーションができる

親が元気なうちに準備ができる

一人っ子が親の介護をはじめる際、多くのことを並行して行うには限界があります。

余裕を持って準備をしておくことが重要です。

早いうちに始めることで親の意向も確認でき、将来の介護について話し合うことができます。

介護に必要な情報や身の回りの整理も計画的に進めることが可能です。

介護の流れや支援制度を把握できる

事前に介護の流れや支援制度を把握しておくと、いざという時に慌てずに対応できます。

不慮の事故や急病を患い、突然介護が必要になるかもしれません。

地域や年度によって詳細が変更される可能性はありますが、大まかに理解しておくことが重要です。

介護費用のシュミレーションができる

早いうちに親の介護を視野にいれておくと、介護費用のシュミレーションができます。

介護の開始時期が未定であっても、介護にかかる費用をあらかじめ計算しておくと、お金の使い方や準備への配慮が可能です。

実際に利用するかもしれない住居近くの介護サービスの下見にも繋がります。

介護サービスの予算はいくら準備できるかや、施設入居費用の準備資金など、近い将来お金に困ることがないよう備えておくと安心です。

一人っ子が親の介護をはじめるには早めの行動が肝心

親の介護は誰もが直面しますが、特に一人っ子は計画的に行動することが重要です。

本記事では、親が元気なうちに早めに情報を集めることや、自分を犠牲にせず支援制度の活用を推奨してきました。

親の介護において、介護する側とされる側の状況が各家庭によって異なるため、完璧な準備は難しいです。

しかし、困った時には相談できる窓口があるのを忘れず、皆が幸せに暮らせる選択をしていきましょう。

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この記事を書いた人

電球型高齢者見守りサービス「ハローライト」の開発・販売を行っています。見守りサービスに関する基礎知識からサービスの選び方までわかりやすく解説。自社サービスに偏ることなく中立な立場から記事を執筆いたします。

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