エンディングノートの書き方と役割｜親が元気なうちにできる安心の準備を始めよう

「親がもしもの時に備えて、何をしておけばいいのだろう」と将来を考えた時、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。

エンディングノートは、親の価値観や希望を記録し、家族が将来の判断を行う際の重要な指針となります。

しかし、いざエンディングノートを親に書いてもらおうと思っても、「どんな内容がいいのか分からない」「嫌がられてしまう」という疑問や悩みを抱える方も少なくありません。

本記事では、エンディングノートの書き方から、親に書いてもらうための工夫、知っておくべき注意点まで、子ども目線で詳しく解説します。

エンディングノートを通じて親子の対話を深め、安心できる未来への準備を始めてみましょう。

エンディングノートとは？遺言書との違いも解説

エンディングノートとは、自分の人生の終末期に向けて、大切な人に伝えたい想いや希望を書き記すノートのことです。

終活の一環として多くの方が活用しており、家族とのコミュニケーションツールとしても注目されています。

一方で遺言書とは法的な効力や記載内容に大きな違いがあるため、それぞれの特徴を理解して適切に使い分けることが重要です。

エンディングノートは意思を残す手段

エンディングノートは、自分の価値観や希望を家族に伝える重要な意思表示の手段の一つです。

普段は話しにくい介護や医療の希望・人生観・家族への気持ちなどを文字として残せます。

例えば、どのような介護を受けたいかや治療はどうするか、大切にしている物の処分方法など、具体的な意思を記録可能です。

また、自分の人生を振り返りながら書くことで、これまでの経験や学びを整理し、残りの人生をより充実させるきっかけになります。

家族にとっても、本人の真の気持ちを知ることができる貴重な資料となり、いざという時の判断材料として活用できるのです。

エンディングノートは遺言書と違って法的効力がない

エンディングノートと遺言書の最も大きな違いは、法的効力の有無です。

遺言書は法律で定められた形式に従って作成すれば、財産の相続や遺産分割において法的拘束力を持ちます。

一方でエンディングノートには法的効力がないため、記載内容は参考資料としての位置づけです。

エンディングノートは自由な形式で書けるため、遺言書では表現しきれない細かい希望や感情を伝えることができます。

エンディングノートを書いてもらうメリット3選

エンディングノートを親に書いてもらうことで得られるメリットとして、以下の3つが挙げられます。

• 親の本音が聞ける
• 家族が備えられる
• 親子の対話のきっかけになる

メリットを理解することで、親にエンディングノートの作成を勧める際の説得材料にもなります。

親の本音が聞ける

エンディングノートを書いてもらう最大のメリットは、普段は聞けない親の本音を知ることができる点です。

親世代は、「家族に心配をかけたくない」という思いから、本当の気持ちや希望を言葉にしないケースが考えられます。

しかし、エンディングノートという形であれば、時間をかけて自分の考えを整理し、率直な気持ちを表現しやすい傾向にあります。

記載された情報を見れば、今後の家族の関わり方を考える上で非常に貴重な指標となり、親の希望に沿ったサポートが可能です。

家族が備えられる

エンディングノートには、将来起こりうるさまざまな状況に対する具体的な情報が記載されるため、家族が事前に備えることができます。

突然の入院時には、かかりつけ医や服用中の薬、アレルギー情報などがすぐに確認でき、適切な医療を受ける手助けになるでしょう。

また認知症が進行した場合には、本人の価値観や好み、生活習慣などの情報を参考に、その人らしいケアの提供が可能です。

エンディングノートは、家族が慌てることなく適切な対応ができるための備えとなります。

高齢者の認知症予防には、以下の記事を参考にしてください。

親子の対話のきっかけになる

エンディングノートの作成は、親子間の対話を深めるきっかけとなるでしょう。

ノートを書く過程で、親は自分の人生を振り返り、子どもは親の考えや経験について改めて関心を持つようになります。

結果として、普段は話題にしない人生観や価値観について話し合う機会が自然と生まれるのです。

また、ノートの内容について質問したり、分からない部分を確認したりする中で、コミュニケーションの頻度も増加します。

親子の対話を通じてより良い関係を築くことができ、家族全体で将来に向けた意識も高まっていきます。

【子ども視点】エンディングノートで知っておきたい項目

子どもの立場から親にエンディングノートを書いてもらう際、特に知っておきたい項目として、以下の7つが重要です。

• 本人の基本的な情報
• 介護や医療の希望
• 残りの人生の過ごし方
• 財産や口座などの情報
• 登録中のデジタル関連情報
• 葬儀やお墓の希望
• 親しい友人の連絡先

各項目について具体的に記載してもらえば、いざという時に慌てることなく、親の意思に沿った対応を取ることができます。

本人の基本的な情報

本人の基本的な情報は、エンディングノートの土台となる最も重要な項目です。

以下の項目を中心に、記載してもらいましょう。

• 氏名、生年月日
• 住所、本籍地
• 電話番号
• 既往歴、現在服用中の薬
• アレルギー情報
• かかりつけ医や通院している病院
• 健康保険証や介護保険証の保管場所

本人の基本情報が整理されていると、各種手続きもスムーズに進めることが可能です。

介護や医療の希望

介護や医療に関する希望は、子どもの意向では決めにくく、重要な判断を行う際の判断基準となる項目です。

介護が必要になった場合の希望として、自宅での介護を望むか、施設での介護を希望するか、どのような介護サービスを利用したいかなど確認しておきましょう。

また認知症が進行した場合の対応についても、本人の価値観に基づいた希望を聞いておくことが重要です。

医療では、延命治療を希望するかどうか、人工呼吸器や胃ろうなどの医療処置に対する考え、終末期医療についての希望などを具体的に記載してもらいましょう。

介護や医療の希望による本人の意思を尊重した判断は、家族にとっても後悔のない選択をする支えとなります。

残りの人生の過ごし方

残りの人生をどのように過ごしたいかという希望は、親の人生をより充実させるために欠かせない項目です。

やり残したこと・叶えたい夢・行きたい場所・会いたい人・挑戦したいことなどを具体的に記載してもらいましょう。

上記の情報が把握できれば、家族は親の希望を実現するためのサポートができます。

残された時間をより有意義に過ごすために、親の夢や希望を叶えられれば、家族全体の絆も深まります。

高齢者が生きがいを持つ重要性については、以下の記事で紹介しています。

財産や口座などの情報

財産や口座情報は、将来の相続手続きをスムーズに進めるために重要な項目です。

銀行口座の詳細（銀行名・支店名・口座番号）や預貯金の残高・株式や債券などの有価証券・不動産情報・生命保険や損害保険の契約内容などを整理してもらいましょう。

また借金やローンがある場合は、その詳細についても記録してもらうことが重要です。

上記の情報が整理されていると相続が発生した際の作業が少なくなり、家族の負担を軽減できます。

ただし、個人情報の取り扱いには十分注意し、適切な保管方法を検討する必要があります。

登録中のデジタル関連情報

現代では、デジタル関連の情報管理も重要な項目の一つとなっています。

セキュリティに配慮しながら以下のような情報をまとめてもらい、IDとパスワードを記載してもらいましょう。

• SNSアカウント
• オンラインバンキング
• ネットショッピングサイト
• 契約中のサブスクリプション
• スマートフォンやタブレットのロック解除方法、サブスクなども含まれます。

「デジタル遺品」と呼ばれる上記の処理方法についても、削除を希望するか継続を希望するかを明記してもらうのがおすすめです。

また、もし本人が利用できなくなった際、アカウント管理や月額料金が発生するサービスの契約情報などがあれば、迅速に対応ができます。

葬儀やお墓の希望

葬儀やお墓に関する希望は、本人の価値観や宗教観を尊重する重要な項目です。

希望する葬儀の形式・宗派・宗教的な要望や葬儀会社の指定、予算の目安などを記載してもらいます。

またお墓についても、既存の墓地を利用するか新たに購入するか、納骨堂や樹木葬などの希望の選択肢を確認しておきましょう。

遺影写真として使用したい写真や、葬儀で流してほしい音楽、参列者への伝言なども事前に考えてもらうこともできます。

本人の希望が明確になっていると、家族は本人の意思を尊重した葬儀を執り行うことができ、後悔しない見送りにつながります。

親しい友人の連絡先

親しい友人の連絡先は、本人に何かあった際の連絡や、葬儀の際の参列者への案内に必要な情報となります。

友人や知人の氏名・住所・電話番号、メールアドレス、関係性を整理して記載してもらいましょう。

また友人からの連絡があった際にも、適切に対応することが可能になり、人間関係を大切にできます。

親にエンディングノートを嫌がられずに書いてもらう工夫

親にエンディングノートを書いてもらう際、最初は抵抗感を示されることがあります。

死について考えることへの不安や「まだ早い」という思い、「家族に迷惑をかけたくない」という複雑な気持ちが理由として挙げられます。

親に嫌がられずにエンディングノートを書いてもらうためには、適切なアプローチと工夫が必要になるでしょう。

まずは、エンディングノートの目的が死の準備ではなく、より良い人生を送るための整理であることを伝えましょう。

また、一度にすべてを完成させる必要はなく、少しずつ書き進めればよいことも説明します。

家族全体で終活について考える機会を作り、親だけでなく子どもも一緒にエンディングノートを作成すれば、抵抗感を軽減できます。

エンディングノートを書くときの3つの注意点

エンディングノートを作成する際には、いくつかの重要な注意点があります。

代表的な注意点として、以下の3つが挙げられます。

• 遺言書は別途必要
• 個人情報の取り扱いに注意
• 保管場所を明確に

エンディングノートの注意点を事前に把握しておくことで、安全かつ効果的に作成が可能です。

遺言書は別途必要

エンディングノートには法的効力がないため、財産の相続や法的な意思表示については別途遺言書の作成が必要です。

エンディングノートに財産分割の希望を記載しても、参考情報としての意味しか持たず法的な拘束力はありません。

確実に反映させたい場合は、「公正証書遺言」や「自筆証書遺言」などの法的に有効な遺言書を作成しましょう。

法務省では、遺言書の様式や自筆証書遺言書保管制度などについて案内しており、手続きの流れや注意点などが示されています。

エンディングノートと遺言書の両方を作成する場合は、内容に矛盾がないよう注意し、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家への相談がおすすめです。

個人情報の取り扱いに注意

エンディングノートは、個人情報の取り扱いに十分な注意が必要です。

不正利用や詐欺などの被害に遭わないために、以下の情報が第三者に漏れない対策が必須です。

• 銀行口座番号
• パスワード
• 個人情報
• 機密性の高い情報

またエンディングノートを紛失した場合のリスクも考慮し、定期的にパスワードを変更したり、重要な情報について見直したりすることも必要です。

エンディングノートの内容を更新した際は、すべての保管場所の情報も同時に更新し、古い情報が残らないよう注意しましょう。

デジタル版のエンディングノートを作成する場合は、適切なセキュリティ対策を講じ、バックアップも確実に取っておいてください。

保管場所を明確に

エンディングノートは保管場所を明確にし、家族と共有しておくことが重要です。

いくら詳細に記載されたエンディングノートでも、必要な時に見つからなければ意味がありません。

保管場所については、少なくとも2人以上の家族に伝えておき、定期的に保管状況を確認しましょう。

保管場所には家族がアクセスしやすく、かつ安全な場所を選ぶのがおすすめです。

エンディングノートは親を想う気持ちで始める未来の準備

エンディングノートは、親を想い、家族の絆を深めるためのコミュニケーションツールの一つです。

親にエンディングノートを書いてもらえば、人生を尊重し、残された時間をより充実させられます。

ノートを作成する過程で生まれる対話や共有される思い出は、家族全体にとってかけがえのない時間となるでしょう。

また、将来起こりうるさまざまな状況に対して事前に準備することで、いざという時に慌てることなく、親の意思を尊重した適切な判断ができます。

エンディングノートは、より良い人生を送るための前向きな取り組みとして捉え、親の人生を大切に思う気持ちを込めて、準備を始めていきましょう。