高齢者の便秘がもたらす危険性とは｜症状と対策を徹底解説

「高齢者は便秘が続くとどう危険なの？」
「高齢の親が便秘で、別の病気ではないかと心配になる…」

親の介護をしていて、排便を数えてみると3日以上なかったり、お腹が張っていたりなどでお悩みではないですか？

高齢者の便秘を放っておくと重い病気を発症したり、最悪の場合、死亡につながったりと危険です。

本記事では、高齢者の便秘が続く原因と危険性、効果的な対策についてご紹介します。

また排泄に関連して、高齢者の頻尿に対する悩みについては、以下の記事で解説しているのでぜひ参考にしてくださいね。

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高齢者が悩む便秘の原因4つ

高齢者の多くが加齢や生活習慣により、便秘に悩まされています。

高齢者に便秘が起こりやすい原因は、以下の4つです。

• 食事量と水分摂取量の減少
• 腸の機能の低下
• 運動不足による筋力の低下
• 服薬による副作用

それぞれについて解説します。

食事量と水分摂取量の減少

高齢者になると、食事量と水分摂取量が減少する傾向にあります。

特にトイレが近くなることから水分補給を控えてしまったり、加齢によるのどの渇きに気づかなかったりしやすいです。

その結果、大腸が過剰に水分を吸収してしまい、便が硬くなって排便が困難困難になります。

高齢者ののどの渇きについては、以下の記事でも紹介しているので、あわせて読んでみてください。

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腸の機能の低下

加齢とともに、腸の働きも衰えはじめます。

「蠕動（ぜんどう）運動」という食べたものを肛門側まで運ぶ働きが、低下するからです。

また、水分や栄養の吸収バランスも乱れやすくなります。

運動不足による筋力の低下

高齢者は加齢とともに、体力面や病気の影響などで外出の機会が減少し、運動不足になりやすいです。

運動不足は筋力が低下し、腸の動きも鈍くさせるため、便秘の原因となってしまいます。

便を押し出す際には、腹筋や骨盤底筋などの筋肉の働きが必要です。

筋力が低下すると、排便に時間を要したり、すべて出し切れずに残便感があったりします。

以下の記事では、高齢者が筋肉をつけるメリットについて解説しているので、ぜひ読んでみてください。

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服薬による副作用

高齢者の便秘は、服薬による副作用として現れる症状の1つです。

薬剤の成分により腸の働きが抑えられ、便秘を引き起こしやすくなります。

例えば、以下のような薬が挙げられます。

• 抗コリン作用剤（パーキンソン病治療剤・抗うつ剤など）
• ガン疼痛に対する麻薬
• 制酸剤
• カルシウム剤

引用：一般社団法人　愛知県薬剤師会　薬事情報センター　5.便秘

高齢者の便秘で高まる危険性

便秘は誰もがなり得る不調ですが、高齢者の場合は重症につながる危険性があります。

便秘が続くと、以下のような症状が現れるので注意が必要です。

• 腸内環境の悪化
• 慢性便秘症
• 痔や裂肛（れっこう）
• 腸閉塞
• 認知機能に影響
• 循環器・脳血管疾患

それぞれについて解説します。

腸内環境の悪化

日常的に便秘が続くと腸内に老廃物が溜まり、腸内環境が悪化します。

腸内環境が悪化すると免疫力が低下し、病気にかかるリスクが高くなる可能性があります。

さらに以下のような症状が現れ、日常生活に支障をきたすかもしれません。

• 腹痛
• 吐き気
• 食欲不振
• お腹の張り
• お腹の不快感
• 睡眠の質の低下

慢性便秘症

一時的な便秘が続くと、慢性便秘症になる場合があります。

慢性便秘症では自然な排便が難しくなり、薬に頼り続ける可能性が高いです。

さらに便秘が長期化すると、大腸憩室症・大腸がん・臓器脱などの疾患につながる危険性も考えられます。

痔や裂肛（れっこう）

便秘が続き硬くなってしまった便は、無理に排泄しようとすると、痔や裂肛（れっこう）を引き起こすケースがあります。

高齢者の場合、一度症状が出ると回復力の低下により治りにくく、繰り返してしまう可能性も高いです。

腸閉塞

便秘が重症化すると、腸閉塞を引き起こす危険性が高まります。

腸閉塞とは、腸の一部が詰まったり閉じたりして、内容物が通過できなくなる状態のことです。

緊急手術が必要な深刻なケースであり、特に注意が必要な症状のひとつです。

認知機能に影響

便秘による腸内環境の悪化は、認知機能にも影響を及ぼす可能性があります。

腸内細菌と認知機能には密接な関係があり、便秘が認知機能低下や精神的不安を促進する可能性があると指摘されています。

循環器・脳血管疾患

排便時に強く踏ん張る行為は、血圧の急激な上昇を引き起こしてしまいます。

特に高齢者は、心臓に負担がかかると不整脈や狭心症などの循環器疾患のリスクがあり危険です。

そのうえ、脳出血や脳梗塞などの深刻な事態を引き起こす可能性も高まるでしょう。

高齢者の便秘症状と特徴

高齢者の便秘には、深刻な疾患が潜んでいる危険性があります。

早期発見とその後の対応のために、どのような症状に注意すべきか詳しく見ていきましょう。

一般的な便秘の症状

厚生労働省の調査によれば、性・年齢別で便秘の症状を訴える人は以下のとおりです。

年齢	～9	10～19	20～29	30～39	40～49	50～59	60～69	70～79	80～
男性	5.8	4.6	6.5	9.0	10.4	13.8	27.2	67.1	107.5
女性	6.6	14.5	35.2	35.5	34.2	38.3	45.6	82.2	108.3

引用：厚生労働省　統計表　『第10表 性・年齢階級・症状（複数回答）別にみた有訴者率（人口千対）』

女性は若いうちから便秘の傾向にありますが、男女ともに年齢が上がるにつれて悩む人が増加しています。

特に以下の症状が複数見られる場合は、便秘になっている可能性が高いです。

• 残便感が残る
• 3日以上排便がない
• お腹が張り膨満感がある
• 腹痛や腹部の不快感がある
• 食欲不振や吐き気を感じる
• 便が硬くて排便時に強い力が必要

1週間以上便秘が続く

高齢者で1週間以上便秘が続く場合、便秘以外の疾患にも要注意のサインです。

排便パターンが普段と変わったり不調が続いたりした場合、医療機関への相談を検討しましょう。

見逃してはいけない危険な症状

高齢者の便秘に加えて以下のような症状がある場合は、重大な疾患が隠れている可能性が高いです。

• 激しい腹痛
• 血便や黒色便
• 38度以上の発熱
• 嘔吐を伴う症状
• 原因不明の体重減少
• 急激な便秘症状の出現

介護者は普段から便の様子も確認しておくと、異変に気づきやすくなります。

緊急性の判断基準

以下の症状がある場合は、緊急性が高いため医療機関を受診する必要があります。

• 冷や汗が出る
• 嘔吐が止まらない
• 強い腹痛が持続する
• お腹が著しく膨らむ
• 意識がもうろうとする
• 普段の便秘薬が全く効かない

高齢者の体に負担がかかり命に関わる危険性もあるため、迷わず医師に診てもらいましょう。

高齢者の便秘予防のための日常的な対策

高齢者の便秘予防には、日常生活での適切な対策が重要です。

ここからは、以下のような日常的に実践できる予防法をご紹介します。

• 規則正しい生活リズムで自然なお通じ
• 便秘解消に役立つ適度な運動習慣
• 高齢者の便秘解消マッサージ
• 快適な排便環境づくり

規則正しい生活リズムで自然なお通じ

自然な排便を促すには、規則正しい生活リズムで過ごし、体内時計を合わせる必要があります。

1日3食の食事や睡眠時間を一定に保つと、腸の働きも整いやすいです。

便秘解消に役立つ適度な運動習慣

排便時には腹筋や足腰の筋肉が必要で、筋力が衰えているとスムーズな排泄が難しくなります。

特に腹筋や骨盤回りの運動を行うと、腸も刺激を受けて蠕動運動が活発になり、便意につながる可能性が高いです。

イスに座って腰をひねる動作や腕を前後に振って足踏みをするなど、自宅でできる運動でも習慣化すれば、便秘解消効果に期待できるでしょう。

高齢者の便秘解消マッサージ

高齢者の便秘解消には、お腹のマッサージもおすすめです。

お腹のマッサージは、溜まっている便の流れを促進させます。

以下の手順で、1日3回程度を食後に行うと効果的です。

もし腹部に痛みがある場合や手術後の方は、医師に相談してから行いましょう。

快適な排便環境づくり

トイレ環境の整備も、スムーズな排便のために役立ちます。

• トイレまでの動線を確保し、安全に移動できるようにする
• 手すりの設置で安心して座れる環境を作る
• 和式トイレなら洋式に変更を検討
• 適度な温度管理（特に冬場）
• 換気を行い快適な空間に
• 十分な明るさの確保

加えて弊社では、トイレに取り付ける電球を高齢者の見守りツールとして推奨しています。

プライバシーを守りながら生存確認できる「ハローライト」について、以下のページで紹介しているので参考にしてください。

高齢者の便秘に効く食べ物

高齢者の便秘には、食事の内容を工夫すると便秘予防と改善の効果に期待できます。

特に摂取したい食材は、以下の通りです。

• 水分補給 
• 食物繊維
• 発酵食品

どれも身近な食料品に含まれるので、積極的に食事やおやつで摂り入れましょう。

水分補給

水分摂取量は1日1.5リットルを目安に、起床時や食事前にコップ1杯飲むのがおすすめです。

温かいお茶や白湯などを飲めば、さらに腸の働きを活発にします。

うまく水分摂取ができない場合は、水分量の多いおやつを食べると摂り入れやすくなるでしょう。

高齢者におすすめのおやつは以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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食物繊維

食物繊維は便のかさを増やし、腸の働きを助ける栄養素です。

厚生労働省の『日本人の食事摂取基準（2025年版）』によると、1日に男性21g以上、女性18g以上の摂取が推奨されています。

以下の食材は食物繊維を多く含んでいるので、積極的に食べると便秘改善に期待できます。

ただし、急激に摂取量を増やすと消化不良や下痢、便秘の悪化につながるため、徐々に増やしましょう。

発酵食品

高齢者の便秘改善には、腸内環境を整える発酵食品も効果的です。

おすすめの発酵食品は、ヨーグルト・チーズ・味噌・ぬか漬け・納豆などがあります。

毎日少しずつ継続的に摂取するため、飽きないように複数の種類を組み合わせるのがおすすめです。

高齢者の介護における便秘ケア

高齢者を介護する際にできる便秘解消対策について解説します。

介護者ができる支援や対策、認知症患者への注意点を把握して接してみましょう。

介護者ができる支援方法

高齢者の便秘には、適切な便秘予防と改善を図りましょう。

日常的なケアのポイントとして、以下の5つが挙げられます。

• トイレへの誘導
• 排便記録をつける
• 適度な運動のサポート
• 水分摂取量の管理と促進
• 規則正しい時間に食事を提供

日常の様子をメモに残せば、通院時に主治医への相談もしやすくなります。

浣腸や便秘薬の適切な使用

高齢者が便秘に悩んでいると、浣腸や便秘薬の使用を検討する方も多いはずです。

ただし、自己判断で使用するのはあらゆる危険性を伴うため、使用前には必ず医師に確認して安全面に気を配りましょう。

用法・用量を守り、長期の使用は避けることが重要です。

また、緊急時の対応をあらかじめ把握しておくと、落ち着いて対応できます。

認知症を患う高齢者の注意点

認知症を患う高齢者には、さらに特別な配慮が必要です。

高齢者自身での生活管理が難しいため、できないところをサポートしてあげてください。

特に注意すべき点として、水分摂取や薬の管理、トイレの場所が分からなくなるなどが挙げられます。

定期的に声をかけたり、記録を取ったりして、高齢者の体の変化にも気づけるようにしておきましょう。

高齢者の便秘は危険性が高いため重症化を防ぐ対策をしましょう

高齢者の便秘は、病状の重症化につながる危険性があります。

便秘の予防・改善には、日々の生活習慣の見直しが重要です。

便秘で気になる症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

本記事で紹介した方法を参考に、ご自身や大切な方の健康管理にお役立てください。