高齢者が冬に暖房を使わないのはなぜ？安全に過ごすための対策も解説

「高齢者が暖房を使わないのは、なぜ？」
「このまま放置しても大丈夫かな？」

上記のようにお悩みではありませんか？

冬の寒さは高齢者にとって大きな負担です。

特に一人暮らしや離れて暮らす高齢者の場合、室内が十分に暖まらないまま過ごしていることがあります。

高齢者が暖房を控える理由は、実は一つではありません。

経済的な事情・習慣・体質・健康上の誤解などが絡み合っていることが多いのです。

この記事では、高齢者が暖房を使わない理由を整理し、放置した場合のリスクを解説します。

そして家族ができる安全対策まで紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

高齢者が暖房を使わない理由

冬になると、離れて暮らす高齢の家族が「部屋が明らかに寒いのに、なぜか暖房をほとんどつけない」という状況は珍しくありません。

心配になる一方で、なぜ暖房を避けてしまうのかは本人にも自覚がないことがあります。

こちらでは、高齢者が暖房を使わない背景を、四つの側面から整理していきます。

光熱費などの経済的な理由

高齢者が暖房を避ける背景の一つには、光熱費などの経済的な負担があります。

高齢者の多くは年金など限られた収入で生活しており、冬の電気代・ガス代の負担は無視できません。

実際に総務省の調査では、65歳以上の一人暮らし世帯の冬季の光熱費平均は約1万5,000円に上ると報告されています。

そのため、「寒くても節約のために暖房は控える」という心理が働くのです。

家族としては光熱費の事情を理解しつつ、暖かく過ごせる方法を一緒に考えることが大切です。

たとえば、こたつや電気毛布など、部分的に暖かさを確保する方法も提案できます。

参考：家 計 調 査 報 告 家計収支編

寒さを感じにくい体質

高齢者は加齢に伴って体温調節機能が低下し、寒さを感じにくくなる場合があります。

筋肉量の減少や血流の低下が原因で、体表面温度が低くても本人は「寒くない」と感じることがあるのです。

しかし実際には体内の温度は低く、低体温症のリスクがあります。

手足の冷え・顔色の悪さ・動作の鈍さなどが低体温のサインですが、本人が自覚していないことが多いため、家族の注意が必要です。

特に冬季は、室温が18℃以下になると体温低下のリスクが高まるため、室温チェックや軽い声かけが大切です。

長年の生活習慣

長年の生活習慣も影響します。

若いころから「冬は我慢するもの」と考えていた高齢者は、寒さに耐えることを当たり前として生活していることがあるのです。

また、暖房器具の操作が面倒で使わない場合もあります。

こうした習慣は、家族から見れば「なぜ使わないのか理解できない」と思うこともあるでしょう。

ただし本人の価値観や心理を尊重しつつ、安全面から工夫を提案することが重要です。

たとえば操作が簡単なリモコンや、自動温度調整機能付きの暖房器具を紹介するだけでも改善が期待できるかもしれません。

健康上への誤解

暖房による乾燥や血圧上昇など、健康上への誤解があって暖房を使わない高齢者もいます。

「暖房は体に悪い」「乾燥で喉を痛める」といった経験や医師のアドバイスが原因で、暖房使用を避けるケースです。

しかし、暖房を使わずに寒いまま過ごす方が、低体温のリスクは高まります。

家族は、高齢者に正しい情報を提供することが大切です。

湿度計で室内の乾燥具合を確認し、加湿器や濡れタオルなどで乾燥を防ぐ方法を提案するのも有効です。

暖房を使わないことによるリスク

暖房を避ける生活は、本人が思っている以上に体への負担が大きく、特に高齢者では深刻な事故や体調不良につながりやすくなります。

寒さそのものよりも、「寒さに気づきにくい」「行動がゆっくりになる」などの特徴と重なることで、危険性が一気に高まるのです。

ここからは、暖房を使わずに過ごすことで起きやすい代表的なリスクを整理します。

低体温・体調不良

冬の低体温症は高齢者にとって非常に危険です。

室温が18℃以下になると、体温が徐々に低下し、免疫力の低下や血流不良を招くことがあります。

低体温症の初期症状は、手足の冷えや疲労感、動作の鈍さですが、本人が自覚しないことも多いです。

家族は、室温チェックや服装の調整、軽い運動を促すなど、日常の見守りで予防することができます。

ヒートショック

暖房を使わないことによって、ヒートショックを起こすことがあります。

ヒートショックとは、急激な温度差がきっかけで血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす現象です。

特に冬場、暖房を使わずに室温が低いまま入浴すると、寒い脱衣所と熱い浴室の温度差によって体に負担がかかりやすくなります。

日本では、冬季にヒートショックが原因とみられる死亡事故が年間約1万人にのぼるとも推定されています。

高齢者は血管の柔軟性が低下しやすく、温度差による血圧変化に体がついていきにくいため、若い世代よりもリスクが高いのが特徴です。

対策としては、脱衣所や浴室を暖かくして温度差を小さくすること、入浴前に家族が声をかけて体調を確認することなどが効果的です。

適切な環境づくりが、高齢者の入浴中の事故を防ぐうえで非常に重要になります。

参考：冬場の住居内の温度管理と健康について

転倒や骨折のリスク

寒さで筋肉が硬くなると、動作が鈍くなり転倒しやすくなるため、注意が必要です。

冬季は滑りやすい床や段差での事故も増加します。

高齢者が転倒すると、骨折や長期入院につながるケースも多く、特に大腿骨頸部骨折は回復に時間がかかり、生活の質を大きく損ないます。

家族は室内の段差や滑りやすい箇所を確認し、手すりの設置や滑り止めマットの活用を検討することが重要です。

また、暖かい環境で軽いストレッチや歩行訓練を行うことで、転倒リスクを減らせます。

高齢者が暖房を使わないときの家族ができる見守り

高齢者が暖房を使わない冬の生活は、体調や安全にさまざまなリスクを伴います。

しかし、家族が少し工夫するだけで、快適さと安全を同時に守ることが可能です。

ここからは、具体的に取り入れやすい見守りや対策を、四つのポイントに分けて紹介します。

声かけやコミュニケーション

家族ができる見守りや対策の一つ目は、声掛けやコミュニケーションです。

暖房や衣服について提案する際は、強制するのではなく、「寒くないか心配している」と伝えるようにしましょう。

本人の意思を尊重しつつ、快適に過ごせる方法を一緒に考える姿勢が大切です。

例えば、「この部屋、少し寒いからブランケットを使ってみない？」など、軽い提案で受け入れやすくなります。

コミュニケーションを通して、高齢者が自ら温かさを意識するよう促すことができます。

室温チェック・温度管理

室温チェックや温度管理も、高齢者が暖房を使わない場合に、とても大切なことです。

室温計やスマートセンサーを活用すると、離れて暮らす家族でも高齢者の生活環境を把握できます。

特に冬は室温が18℃を下回らないよう管理することが推奨されています。

また、暖房器具の設定温度を低めにして長時間稼働させる方法や、こたつや電気毛布を活用する方法もおすすめです。

部屋全体を暖める必要がない場合でも、居場所を暖かく保つ工夫を心がけましょう。

見守りサービス・アイテム

高齢者の安全を遠隔で確認できる見守りサービスも増えています。

温度センサーやカメラ、電気使用量チェックを組み合わせることで、異常を早期に察知できます。

例えば、電気使用量の変化から暖房器具の稼働状況を確認したり、温度センサーで室温が一定以下になった場合にアラートを受け取ったりすることが可能です。

見守りサービスについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

節約と快適を両立する工夫

高齢者が暖房を使わないときは、節約と快適を両立する工夫も大切です。

断熱カーテンや窓用フィルムで室内の暖かさを保つことができ、重ね着やカイロを活用することで、暖房使用を最小限に抑えられます。

また、部屋の断熱対策や家具の配置で熱の逃げやすい場所を防ぐことも有効です。

快適さと節約を両立する工夫は、冬の高齢者の生活を安全に保つうえでとても大切です。

まとめ

高齢者が暖房を控える理由は、経済面・体質・生活習慣・健康観の4つに分けられます。

しかし、放置すると低体温やヒートショック、転倒などのリスクが高まるため、注意が必要です。

家族は声かけや室温管理、見守りサービスの活用で安全を確保できます。

寒さの中でも高齢者が安心して快適に過ごせるよう、生活環境や習慣の工夫を意識するようにしましょう。