難聴の高齢者に対するコミュニケーションの取り方｜認知症との関係も解説

「高齢者の親が難聴で話しづらい…」

「コミュニケーションの取り方にポイントはある？」

高齢者の難聴に対して、上記のように悩んでいませんか？

高齢者はさまざまな理由から耳が聞こえにくくなる傾向にあるため、だんだんコミュニケーションが取りづらくなります。

この記事では、加齢性難聴の方に対するコミュニケーションの取り方を解説します。

難聴の原因と特徴も詳しく紹介しているので、あなたの親御さんへの接し方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

加齢性難聴とは

加齢性難聴は、年齢を重ねるにつれて耳が少しずつ聞こえにくくなり、特に言葉をはっきり聞き取るのが難しくなる状態です。

耳の中にある「有毛細胞」という音を感じ取る役割を持つ細胞が減ることで起こりやすいです。

有毛細胞は年齢とともに減少していき、一度失われると再び増えることはありません。

そのため音を神経に伝える力が弱まり、音や声が聞こえにくくなってしまうのです。

加齢性難聴と認知症には関係がある？

加齢性難聴が進むと、本人が知らないうちに人と話す機会が減り、孤立することで認知症のリスクを高める可能性があるとされています。

2017年の国際アルツハイマー病会議でも、難聴が認知症の原因の一つになると指摘されています。

参考：難聴と認知症の関連について – 東京逓信病院

加齢性難聴は徐々に進むため、本人が気づかないうちに聞こえにくくなることが多いです。

そのため、早めに対応するには家族や周りの人が変化に気づくことが大切です。

高齢者の聞こえの変化を早く察知して適切なケアを行えば、認知症のリスクを減らす手助けになります。

以下の記事では、高齢者の認知症について詳しく記載しているので、参考にしてください。

加齢性難聴の特徴

加齢性難聴は、加齢によって音を感じる有毛細胞の減少が原因で起こり、認知症とも深い関係性があることがわかりました。

さらに加齢性難聴は、高音や小さい声が聞こえにくくなるのが特徴です。

ここからは、加齢性難聴のそれぞれの特徴を詳しく紹介していきます。

高音が聞こえにくくなる

加齢性難聴の特徴として、高い音が聞き取りにくくなることがあります。

高い音には言葉をはっきり聞き取るために大事な「子音」が多く含まれているため、高い音が聞き取りづらくなると、結果的に言葉全体を理解しにくくなるのです。

一般的に子どもは2万Hz、成人は1万6千Hzまで音が聞こえますが、高齢になると5千Hzほどまでしか聞こえなくなることがあります。

一方で、低い音は比較的聞き取りやすいため、高齢者と話すときは声を低めにして、はっきり話しかけると良いです。

人の声を聞き分けにくくなる

加齢性難聴になると、周りがうるさい環境では、自分が聞きたい音だけを聞き分けるのが難しくなります。

それは音を選んで聞く力が弱くなり、会話中に周囲の雑音が混ざると、どれが話し声なのか分からなくなってしまうからです。

さらに音が割れたり、こもるように聞こえたりが原因で、言葉の聞き取りが難しくなります。

このような状況では、できるだけ静かな場所で話すようにしたり、電話ではなく直接会話をしたりするのが効果的です。

小さい声は聞こえにくく大きな声はうるさく感じる

加齢性難聴の特徴として、小さい音は聞こえにくいのに、大きい音は必要以上にうるさく感じることがあります。

この現象は「リクルートメント現象」と呼ばれ、内耳の障害が原因で起こりやすいものです。

高齢の方に聞こえるようにと大声で話したとき、「そんなに大きな声じゃなくても聞こえるよ！」と怒られた経験があるかもしれません。

それは、大きな音がリクルートメント現象の影響で、相手には不快に感じられるからです。

とはいえ、小さすぎる声だと聞き取りづらいので、加齢性難聴の方と話すときは、適度な音量で話しかけるよう心がけましょう。

症状に気づきにくい

加齢性難聴には、自分では気づきにくいという特徴もあります。

突発性難聴のように突然聞こえなくなるわけではなく、時間をかけて少しずつ聞こえが悪くなるため、本人が自覚しづらいのです。

また自分で気づいていたとしても、本人が「耳が聞こえにくくなった」と認めたくない場合もあります。

もし本人が難聴に気づいていないようなら、優しく伝えてあげることが大切です。

加齢性難聴の原因

加齢性難聴は、内耳が加齢によって老化することで起こると言われています。

その主な原因は以下の3つです。

• 内耳にある感覚細胞の障害
• 内耳の血管の障害
• 内耳の神経の障害

内耳の「蝸牛（かぎゅう）」という部分には、音を感じる感覚細胞がたくさんありますが、年齢を重ねるとこの細胞が減っていき、それが音が聞こえにくくなる理由の一つです。

さらに高齢になると内耳の血管が硬くなり、栄養を運ぶ血液が行き届かなくなることで、内耳の働きが低下してしまいます。

また内耳の神経がうまく働かなくなると、音が正しく脳に伝わらず難聴が起こることがあります。

加齢性難聴の方への接し方

難聴の方は普通の方よりも声が聞きづらい傾向にあるため、本人が聞き取りやすい声を意識して話す必要があります。

加齢性難聴の方への接し方は、以下の3つです。

• 相手に合図して目を見る
• 大きく口を動かしてゆっくりと話す
• 大きめの低い声で話す

それぞれ詳しく解説していきます。

相手に合図して目を見る

耳が遠い方には、いきなり話しかけると対応が難しい場合があります。

まず相手と視線を合わせて声をかけ、話し始める合図をしましょう。心の準備ができた状態で会話を始めると、内容を理解しやすくなります。

また、表情やしぐさも重要なコミュニケーションの手段です。

正面から相手の目を見て話すことで声が直接届き、相手は表情や口の動きからも内容を理解しやすくなります。

耳元で低い声で話すのが効果的な場合もありますが、「聞き取りにくい」「距離が近すぎて不快」と感じる方もいるため、相手に合わせて対応しましょう。

大きく口を動かしてゆっくりと話す

難聴の高齢者は聞こえた音を頼りに、話の内容を推測して理解することが多いです。

そのため、話すときはできるだけゆっくりと話し、一つ一つの単語を区切るようにして、考える時間を作ってあげましょう。

ゆっくり話すことで、聞き取りにくい子音も分かりやすくなります。

また、口を大きく動かして話すことも大切です。これによって自然とゆっくり、はっきりした話し方ができるようになります。

特に「カ行」「サ行」「タ行」「パ行」など聞き取りにくい音は意識して発音しましょう。

高齢者の中には、口の動きを見ることで言葉を推測できる方もいるので、相手の顔を見て話すのが効果的です。

大きめの低い声で話す

難聴の方と話すときは、普段より少し大きめの声で、抑揚を保ちながらゆっくり話しましょう。

ただし、人によっては声が大きすぎるとうるさく感じることもあるので、相手の反応を見ながら声の大きさを調整することが大切です。

難聴の方は小さな声を聞き取りにくいですが、怒鳴るような大きな声だと音が響きすぎて不快に感じることもあります。

そのため、やや大きめで落ち着いた低い声で話すよう心がけましょう。

加齢性難聴の方とのコミュニケーションの取り方とポイント

これまで加齢性難聴の方への接し方を解説しました。難聴になっている高齢者へスムーズにコミュニケーションを取るには、いくつかポイントがあります。

こちらでは、加齢性難聴の方に対する円滑なコミュニケーションの取り方を紹介していきます。

聞こえやすい環境をつくる

雑音が多いと聞き取りにくいため、テレビを消すなどして静かな環境を作ることが大切です。

そして明るい場所を選び、表情や口の形がよく見えるようにしましょう。

話すときは、相手に近づくと聞こえやすくなりますが、近づきすぎると不快に感じる方もいるため、一定の距離を保つことが大切です。

補聴器を使用している場合は、1～2メートルほどの距離が最適とされています。

小さな間違いを指摘しない

聞き間違いが続いても、大きな問題にならなければ指摘したり責めたりしないようにしましょう。高齢者は自尊心を傷つけやすく、こちらもイライラしてしまうと、気まずい状況が続いてしまいます。

難聴の高齢者は聞き間違いや勘違いが増えることがありますが、不安にならないよう、ポジティブな声かけが大切です。「さすが◯◯さん」「◯◯さんはよく知ってますね」と、自信を持ってもらえるような言葉をかけてあげましょう。

筆談やリアクションを添える

言葉だけでなく、筆談や手ぶり・見ぶりなどを使って、視覚的にコミュニケーションを取ることが大切です。

特に話し手がマスクをしていると、口元や表情が見えにくくなり、言葉が伝わりにくくなります。

紙やペンを持ち歩き、コミュニケーションボード（イラストを指さして意思を伝えるツール）などを活用すると、より分かりやすく意思を伝えることができます。

難聴の方への接し方を知ってコミュニケーションを図ろう

加齢性難聴は、年齢とともに耳が聞こえにくくなる状態で、有毛細胞の減少が主な原因です。

また内耳の障害や血管の老化により、高音や小さな声が聞き取りづらくなります。

難聴の方とのコミュニケーションには、相手と視線を合わせて大きめの低い声で会話し、筆談や手ぶりを交えることが効果的です。

静かな環境作りや補聴器も適切に使用して、高齢者と円滑なコミュニケーションを取っていきましょう。