喫煙と認知症との関係とは｜受動喫煙や効果的な禁煙方法も解説

喫煙が健康に悪影響を及ぼすことは広く知られていますが、実は認知症の発症リスクとも深く関わっていることをご存じでしょうか。

ニコチンや有害物質は、脳に対して記憶力や判断力の低下を招く恐れがあります。

また、長期的には認知機能の衰えにもつながることが懸念されるのです。

今回の記事では、喫煙が脳に与える影響や認知症との関連性、さらに受動喫煙のリスクについても解説します。

無理なく禁煙を続けるための効果的な方法も紹介するので、高齢になる大切な親御さんのために、今できる対策を考えてみませんか。

認知症とは

認知症は、脳の働きに障害が生じ、記憶力・判断力・理解力などの日常生活に必要な認知機能が継続的に低下していく状態を指します。

加齢に伴って発症することが多く、特に高齢者に多く見られますが、病気や生活習慣によっては若年層でも発症することがあるのです。

代表的な認知症には以下の種類があります。

• アルツハイマー型認知症
• 血管性認知症
• レビー小体型認知症

初期では物忘れなどの軽い症状から始まり、進行するにつれて日常生活に支障をきたすようになります。

認知症は完全に治すことが難しいものの、早期発見と適切な対応により進行を緩やかにすることが可能です。

以下の記事では一人暮らしと認知症の関係性について解説しているので、合わせて参考にしてください。

喫煙は認知症の発症要因になる

喫煙が健康に与える悪影響は広く知られていますが、認知症との関連についても長年にわたり多くの研究が重ねられてきました。

世界的に権威のある医学雑誌「ランセット」の報告では、「認知症の発症に関わる12のリスク要因のうち、喫煙は3番目に高いリスク」とされています。

さらに、喫煙者はタバコを吸わない人に比べて、「認知症を発症するリスクが2〜3倍に上る可能性がある」という研究結果も明らかになっています。

ただし、これまでの調査で喫煙と認知症の強い関連性は確認されているものの、因果関係がはっきり証明されたわけではないというのが専門家の見解です。

参考：World Alzheimer Report 2023

参考：Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission

喫煙が認知症を発症する原因とは

喫煙が認知症発症のリスクを高める背景には、いくつかの具体的な要因が関係しています。

脳の機能に悪影響を及ぼすメカニズムを理解することで、喫煙がどのようにして認知症の発症につながるのかが見えてきます。

ここからは、その主な要因について詳しく見ていきましょう。

酸化ストレス

喫煙は、脳内に酸化ストレスを引き起こすことで、認知症の発症リスクを高める原因の一つとされています。

タバコに含まれる有害成分が体内で活性酸素の生成を促進し、酸化のバランスが乱れる原因となるためです。

活性酸素は細胞にダメージを与える性質があり、脳の神経細胞が傷つくことで、記憶力や判断力といった認知機能が徐々に低下していきます。

さらに、酸化ストレスはアルツハイマー型認知症の要因とされる、アミロイドβの蓄積を促進する可能性も指摘されています。

そのため、喫煙が脳に与える影響は決して軽視できません。

脳への血流の悪化

脳への血流の悪化も、認知症を発症する原因の一つです。

喫煙は血管を収縮させて動脈硬化の進行を招き、脳への血流を悪化させる原因となります。

脳は非常に多くの酸素と栄養を必要とする器官であり、血流が滞ることで神経細胞に必要なエネルギーが届きにくくなります。

こうした状態が長期間続くと、脳の一部が萎縮したり、微小な脳梗塞が起きたりして、認知機能低下のおそれがあるため注意が必要です。

特に、血管性認知症はこのような血流障害が直接的な原因となっており、喫煙がもたらす循環器系への負担が、脳にも深刻な影響を及ぼすことがわかっています。

認知症のリスクに関する病気の発症

喫煙は、認知症のリスクを高めるさまざまな病気を引き起こすことでも知られています。

たとえば、以下のような病気を引き起こすことがあり、すべて認知症の発症と深い関係があるとされています。

• 高血圧
• 糖尿病
• 心疾患
• 脳卒中

上記の病気は、血管を傷つけたり、脳への酸素供給を妨げたりすることで、認知機能に悪影響を及ぼすことがあります。

喫煙者は非喫煙者に比べてこれらの疾患にかかるリスクが高く、結果として認知症を発症する可能性も高くなると考えられています。

つまり、喫煙は間接的にも認知症のリスクを押し上げる要因になっているのです。

受動喫煙も認知症を引き起こす可能性がある

喫煙による影響は本人だけにとどまらず、受動喫煙によって周囲の人々にも及びます。

受動喫煙とは、喫煙者の吐き出した煙や、タバコの先から立ち上る副流煙を周囲の人が吸い込んでしまうことを指します。

実はこの副流煙には、喫煙者が吸い込む主流煙よりも多くの有害物質が含まれているため、受動喫煙による健康リスクも深刻です。

近年の研究では、受動喫煙が脳に悪影響を及ぼすことにも注目が集まっています。

長いあいだ煙にさらされることで、認知症のリスクが高まる可能性があるとされているのです。

特に家庭や職場など、日常的に喫煙環境にさらされている人は注意が必要です。

効果的な禁煙の方法

認知症をはじめとしたさまざまな健康リスクを減らすためには、できるだけ早く喫煙習慣を断ち切ることが大切です。

しかし、長年の習慣となっている喫煙をやめるのは簡単なことではありません。

ここからは、無理なく継続できる禁煙のために有効な方法をいくつかご紹介します。

自分に合ったアプローチを選び、着実な禁煙を進めていきましょう。

禁煙の意思を明確にする

禁煙を成功させるためには、まず喫煙者の本人の「本気でやめたい」という強い思いが何より大切です。

喫煙が体に及ぼす影響や、家族への健康被害、経済的な負担などを具体的に意識することで、禁煙への動機づけが高まります。

禁煙の目標や理由を紙に書き出したり、スマートフォンのメモに残したりしておくと、つらい時に自分を励ます材料になるでしょう。

また、周囲の人に禁煙を宣言することで、意志が揺らぎそうなときの支えになり、途中で挫折しにくくなります。

まずは本人が「なぜ禁煙するのか」を明確にし、その思いをしっかり持ち続けることが、成功への第一歩です。

禁煙外来を利用する

自力での禁煙が難しいと感じる場合は、医療機関の「禁煙外来」を利用するのも効果的な方法です。

禁煙外来では、医師による専門的なアドバイスやサポートを受けながら、計画的に禁煙を進めることができます。

ニコチン依存度の評価や、禁煙に伴うストレス・離脱症状への対処法など、個々の状況に合わせた対応をしてもらえるのが大きなメリットです。

また、一定の条件を満たせば健康保険が適用されるため、費用の負担も比較的軽くすみます。

一人で悩まず、医療の力を借りて取り組むことで、禁煙の成功率は大きく高まります。

禁煙補助剤を使用する

禁煙によるイライラや集中力の低下など、いわゆる「離脱症状」は多くの人にとって大きな壁になります。

離脱症状を和らげ、スムーズに禁煙を続けるためには、禁煙補助剤の活用が効果的です。

代表的なものには、ニコチンパッチやニコチンガムなどがあり、体に徐々にニコチンを届けることで、急激なニコチン不足によるストレスを軽減できます。

また、医師の処方によって使える飲み薬タイプの補助剤もあり、より強い依存に対しても有効です。

自分の喫煙状況や体質に合った補助剤を選ぶことで、無理なく禁煙を進められるでしょう。

禁煙のイベントに参加する

一人で禁煙に取り組むのが不安な場合は、禁煙に関するイベントに参加する方法もおすすめです。

地域の保健所や企業、医療機関などでは、禁煙サポートを目的とした講習会やグループセッションが定期的に開催されています。

同じ目標を持つ仲間と情報を共有したり、成功体験を聞いたりすることで、モチベーションが大きく高まります。

また、専門家のアドバイスを直接受けられる機会も多く、より効果的な禁煙方法を学べるのもメリットです。

孤独を感じず、仲間と支え合いながら進められれば、禁煙の成功率はぐっと高まるでしょう。

喫煙と認知症の深い関係性を知っておくことが大切

認知症は加齢・生活習慣・病気などにより脳の認知機能が低下する状態で、喫煙はその大きなリスク要因の一つとされています。

喫煙により酸化ストレスや脳血流の悪化が起こり、認知症の発症リスクが高まる可能性があります。

さらに、受動喫煙でも同様の影響があるため注意が必要です。

禁煙によって認知症の予防につながる可能性があり、禁煙外来や補助剤の活用、仲間との支え合いが成功のカギとなります。

健康な未来のために、今日からできる対策を始めてみましょう。