老人性うつとは？認知症との違いや見極めるチェックポイントを解説

「高齢の親の様子がおかしい。老人性うつ？」

「認知症との違いはなに？」

上記のように悩んでいませんか？

老人性うつには不安感や緊張感などのさまざまな症状があります。

また、進行の速度や物忘れの有無など、認知症とも違いがあるのです。

今回は、老人性うつの症状と原因、認知症との違いを解説します。

老人性うつを見極めるチェックポイントも合わせて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

老人性うつとは

老人性うつは、高齢の方がかかる精神疾患です。

かかる確率は地域差がありますが、全高齢者のうちの約8%だと言われており決して他人事ではありません。

こちらでは老人性うつの症状と原因を、詳しく解説していきます。

老人性うつの症状

老人性うつの主な症状には、以下のようなものがあります。

• 不安
• 緊張
• 焦り
• 不眠
• めまい
• 頭痛
• しびれ
• 疲れやすい
• 食欲不振
• 集中力や意欲の低下
• 妄想

また、一般的なうつ病と似た症状ですが、高齢者の場合は心の不調よりも体の不調を強く訴えることが多いです。

意欲や集中力の低下は、年齢とともに体力や気力が衰え、物事に対するやる気が減ってしまうことも影響しています。

さらに、老人性うつの特徴のひとつとして「妄想」が現れやすいことも特徴です。

例えば、「自分は治らない病気になった」「自分は周りに迷惑ばかりかけている」と思い込んでしまうことがあります。

こうした妄想は、本人にとっては現実のように感じられるため、周囲の理解と適切な対応が大切です。

原因

老人性うつの原因は、大きく「環境の変化」と「心理的な影響」に分けられます。

例えば環境の変化だと、以下のようなものがあります。

• 退職
• 子どもの独立
• 引っ越しなどによる生活の変化
• 人と関わる機会の減少

特に長年仕事を続けてきた人が退職すると、急に時間が余りどう過ごせばよいかわからなくなります。

趣味や人との交流を楽しめるとよいのですが、刺激が減ってしまい、家にこもりがちになる高齢者もいるのです。

心理的な影響としては配偶者やペットを失ったり、病気になったりすることが関係しています。

特に、大切な人やペットを亡くすとその喪失感が大きなストレスとなり、気持ちの回復に時間がかかることがあります。

以下の記事では、高齢者のひきこもりについて詳しく解説しているので、合わせて参考にしてください。

老人性うつと認知症の違い

老人性うつは早く見つけて適切な治療を受ければ、悪化を防げます。

しかし、認知症と似た症状が出ることがあり、本人も周りの人も気づきにくい傾向にあるため、注意が必要です。

ここからは、老人性うつと認知症の違いを紹介します。

認知症について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

進行の速度

老人性うつと認知症の違いの一つ目が、進行の速度です。

認知症は加齢とともに少しずつ進行し、きっかけがなく発症することが多いです。

一方で老人性うつは、何かしらの出来事がきっかけとなって発症し、いくつかの症状が一度に出ることがあります。そのため、家族や周囲の人が「最近元気がない」「急にぼんやりすることが増えた」と感じやすいのが特徴です。

物忘れの有無

老人性うつと認知症はどちらにも記憶障害がありますが、現れ方に違いがあります。

認知症は軽い物忘れから始まり、少しずつ進行して行く傾向にあります。例えば、晩ご飯を食べたこと自体、完全に忘れてしまうことがあるため注意が必要です。

一方で老人性うつの場合は、環境の変化や特定の出来事がきっかけとなり、突然数日前のことを思い出せなくなることがあります。そのため、「どうして思い出せないのか」と不安になり、心配が強まる傾向にあります。

本人の自覚の有無

認知症は、発症したばかりの頃は自分の変化に気づいて不安を感じることがありますが、病気が進むにつれて自覚が薄れていくことが多いです。

一方で老人性うつは、自分の不調をはっきりと自覚できるため、不安がさらに強まり精神的に不安定になりやすい傾向があります。

受け答えの違い

受け答えも老人性うつと認知症には、それぞれ違いがあります。

認知症の人は、質問されると比較的スムーズに答えられることが多いですが、老人性うつの人は、会話の内容を理解するのに時間がかかります。

思考力が低下しているため、質問の意味がわからなくなるかもしれません。

気分の落ち込み

認知症と老人性うつの違いの一つに、気分の落ち込みの程度もあります。

認知症の人は気分が大きく変動することはあまりありませんが、老人性うつの人は気分が沈みやすく、波があるのです。日によって、または一日の中でも気分が変わることがよくあります。

自責の念の有無

老人性うつと認知症では、自責の念にも違いがあります。

老人性うつの人は、「自分の病気や物忘れのせいで周りに迷惑をかけている」と自分を責め、物事を悲観的に考えたり、自分を否定したりすることが増えます。

ひどい場合は「死にたい」と思うこともあるため、自傷行為をしないように注意しておく必要があるのです。

一方で認知症の人は意欲が低下したり、問題行動が目立ったりすることはありますが、自分を責めることはほとんどなく、あまり気にしていない様子が一般的です。

老人性うつかを見極めるチェックポイント

高齢の方が「今までと比べて元気がない」「何か様子が違う」と感じたら、本人の様子を観察したり接したりしながら、以下の点をチェックしましょう。

• しっかり睡眠や食事が取れているか
• 近頃生活に変化はないか
• 楽しみに対してやる気が失せていないか
• 体調は問題ないか

それぞれ詳しく解説していきます。

しっかり睡眠や食事がとれているか

老人性うつでは、気分の落ち込みだけでなく、初期の段階から食欲が落ちたり、睡眠がうまく取れなくなったりすることがよくあります。

そのため食欲があるか、夜にしっかり眠れているかを確認することが大切です。

もしどちらも十分でなく、気分も沈んでいる場合は、老人性うつの可能性が考えられます。

以下の記事では、高齢者の睡眠を詳しく解説しているので、合わせて参考にしてください。

生活に変化はないか

退職や配偶者との死別など大きな生活の変化は、老人性うつのきっかけになることがあります。

もし最近1カ月以内に生活に変化があったなら、それがうつの原因かもしれません。

また、人によっては1年以上前の出来事が、現在でも心に残っていることがあります。

過去の出来事で今も気になっていたり、ショックが続いていたりなど心配なことがないかを確認してみましょう。

楽しみに対してやる気が失せていないか

老人性うつになると、何に対しても興味を持たなくなり、楽しさを感じにくくなります。

以前は趣味や楽しみを持っていた人でも、発症後にやる気を失うことがあります。

自分から楽しもうとする姿勢があれば安心ですが、好きなことや趣味の活動をまったくしなくなった場合、老人性うつの可能性があります。

体調は問題ないか

老人性うつでは、頭痛や疲れやすさなどの体調不良が見られることがあります。

特に明確な原因がなく、いつも疲れているように見える場合は、うつの発症を疑った方が良いでしょう。

老人性うつとわがまま

老人性うつでは、わがままな行動が見られることがあります。

これは、過去の失敗・後悔・孤立・体の不調などが原因で、自分に対して無力感や自己否定感を感じることがあるためです。

その結果、わがままな要求をすることがあります。

また老人性うつは、憂うつな気分や無気力、興味を失う症状があり、気分の浮き沈みが激しくなることがあるのです。

このような行動に対しては、周りの家族や介護者が理解を示し、対応することが求められます。

まず、老人性うつが疑われる場合は専門家に診てもらうことが大切です。

そしてわがままな行動や要求に対しては、根気よく話を聞いたり、理解を示したりする必要があります。

また、高齢者は日常のストレスがたまりやすいため、ストレスを解消できる運動や趣味、社交的な活動の時間を作ることも効果的です。

以下の記事では高齢者の趣味について解説しているので、参考にしてください。

老人性うつの治療法

老人性うつが疑われる場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

治療は、主に「薬物治療」「環境調整」「精神療法」の3つの方法で行われます。

薬物治療では、うつ病と同じように抗うつ薬などが使われます。

飲み合わせに気を付ける必要がある薬もあるので、医師や薬剤師には現在飲んでいる薬を正しく伝えましょう。

環境調整では、家族や周囲の人のサポートが重要です。

高齢者が元気に過ごせるように家庭内環境を整え、介護サービスを利用して外との交流を増やしたり、気分転換に外出させることも効果的です。

精神療法では、医師やカウンセラーの治療はもちろん、家族や周囲の人の接し方も大切です。「頑張れ」や「何かしなきゃダメ」と責めるような言葉は避けましょう。

主治医から、高齢者との接し方のポイントを教えてもらうことで、症状が悪化しないような接し方を学べます。

まとめ

今回は老人性うつと認知症の違いを解説しました。

老人性うつは高齢者に多く見られる精神疾患で、身体的な不調や気分の落ち込みが特徴です。

環境の変化や心理的な影響が原因となり、認知症と似た症状が現れることもあります。

治療は、薬物療法・環境調整・精神療法を組み合わせて行い、家族や周囲の理解とサポートが大切です。

高齢の親が一人暮らしをしていると、安心して過ごせているか心配になるでしょう。

もし老人性うつや認知症の兆候が見られたら、日々のサポートが重要です。

そんなときに当社のハローライトを使用すれば、遠くにいても高齢の親を見守れます。

大切な家族だからこそ、しっかりサポートできる環境を整えましょう。